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「はーい、ナイスショット♡ せんせぇ、すっごいの撮れちゃった〜!」
成田は扉の前に佇むとスマホを翳したまま、悪戯に笑って言った。決定的場面を撮られると宮村は焦った顔で慌てる。
『なっ、何なんだ君は……!?』
「遅いじゃないか澄春。早く来いよ、最後までする所だっただろ?」
「ごめ〜ん、ちょっと面白そうだったから見てた♡」
「お前な〜」
『何なんだコレは…――!?』
突然の事に混乱した様子で聞いてきた。成田は俺の隣に来ると撮れた画像を見せた。それを見てクスッと笑うと変態教師に教えてやった。
「アンタ、なかなか良い顔で撮れてるぜ。この画像を学校中にバラ撒かれたくなかったら二度と俺に近付くな、わかったか? それにアンタとのここでの会話も全部、録音させてもらった。単位を餌に男を物色するなんて趣味が悪いぜ。周りに噂をされるのが嫌なら、早くこの学校を辞める事だ」
そう言って成田と二人で怪しく身体を絡ませると、嘲笑うようにクスクスと笑った。教師は顔を真っ青にさせると、脱いだズボンを急いで履いて生物室から走って出て行った。
宮村の肝を冷やしたような顔が傑作だった。多分、これで懲りたに違い無い。教師が逃げた姿を見ながら二人してお腹を抱えて笑う。
「今の焦った顔ウケる! 胤夢君って顔が綺麗だけど怒らすと怖いな〜。僕も気を付けよっと☆」
「よく言うだろ。綺麗な薔薇には棘があるって、俺に触ると火傷するってことだ」
そう言って成田が撮った画像を見ながら、クスッと笑った。
「大体、大人は馬鹿なんだよ。俺の色気に騙される奴はとくにな――」
成田が隣で俺をジッと見てくると呟いた。
「なんか胤夢君が言うとカッコ良く聞こえちゃう♡」
「何、惚れた?」
「うん!」
急に隣で甘えて来ると瞳を閉じて、フザケ半分でキスをねだってきた。その顔を見て『プッ』と笑うと軽く受け流す。
「しないよ、お前とは――」
「え〜、一回くらいチューしようよ?」
「前にも言っただろ。俺は澄春とはキスしないって」
「そこ本人に向かってストレートに言うかな〜!? 何で僕はダメなの?」
怒っ顔でほっぺたを膨らませると隣で拗ねた。それを見て、頭を優しく撫でる。
「お前は俺の特別だからだ。ほら、帰るぞ?」
そこで澄春に謎めいた言葉を言うと、持ってるスマホを本人にポンと返した。はだけた胸元のボタンを手で留め直し、テーブルに置いた鞄を持って廊下に出た。成田は口をポカーンと開けたまま、不思議そうな顔でキョトンとする。
「何それ、それって好きって事でしょ!? 特別ってそう言う意味じゃないの〜? ねぇ、ちょっと待ってよ胤夢君……!」
其処で自分の鞄を手に持つと、後ろから急いで追いかけて来た。俺は惚けた顔をしながら、『嫌だ。待たない』と意地悪に言い返して先に歩く。
そうだ澄春。お前は俺の聖域になれ――。
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