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「いいか相葉、デートの時はもしもの時の為にゴムも持っていけよ。でないとデキちゃうからな!」
羽柴は耳打ちしながらそう言った。その話しに俺は呆れると、足でケツにキックを入れた。
『俺の耳元でそんな話をするな!』
「うわっ……!?」
「えっ、ひゃっ!」
その瞬間、曲がり角から男子生徒が出て来た。羽柴は小柄な子にぶつかると、そのまま二人で床に倒れた。宙にプリントの紙が舞い上がる。俺は『しまった』と一瞬、焦った。
「いった〜い! もー、いきなり何するのさ!? ちょっと重い、どいてよ!」
小柄の男子生徒は羽柴の下に居て、身動きがとれなく怒っていた。上に覆い被さった本人は、目をクルクルさせた。
階段前の廊下で羽柴が小柄の男子生徒にぶつかって、床には沢山のプリントが散らばっていた。その光景に思わず頭を抱えると頭痛がしてきた。
「大丈夫かよ、成田?」
俺の直ぐ側で聞き覚えのある声がした。自然に振り向くと、目の前にあの銀髪の少年がいた。
「お前…――!」
不意に話し掛けた。少年は俺に目を向けると青い瞳でジッと見てきた。そして、何も言わずにその場から直ぐに立ち去った。小柄の男子生徒を助けずに、そのままほっとくと上の階段を登った。それを見て自然と身体が動いた。
「ゴメン、悪いけどそいつの事よろしく……!」
其処で一言謝るとあの少年を追って、上の階へと駆け上がった。
「えっ、ちょっと……!? 嘘、待ってよ! 置いて行かないでよ、胤夢君――!」
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