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俺は無意識にあの少年を追いかけた。そして、階段を上がると非常階段の入口に辿り着いた。息を切らして扉を開けると屋上に出る。
「ッ、ハァハァ……!」
追う時に階段を一気に駆け上がったから息が乱れた。屋上に出ると周りを直ぐに見渡した。何故かあの少年がここに居るような気がすると、目をキョロキョロとさせる自分がいた。どうしてかあの少年の事が気になっていた。だからアイツにまた会ったら…――。
「くそ、何処に行った……!」
「俺を探してるのか?」
「ッ!?」
咄嗟に振り向くと、アイツは俺の後ろに立って笑っていた。目の前にあの少年が現れると、息を呑んで顔をジッと見つめる。そうだ、あの時もコイツは風みたいに現れた――。
明るい空の下で少年の長い髪を結んだ黒いリボンが、風に吹かれて靡くと揺れた。海のように青く、澄んだ綺麗な二つの瞳に見られると一瞬、自分で何を言おうか忘れてしまった。黙っていると少年が先に話した。
「……どっかで前に見た顔だと思えば、あの時の死に損ないか。お前、相変わらず冴えない顔してるな」
そう言って話すとクスッと笑った。其処でムッとした顔をすると言い返す。
「俺を死に損ないって言うな!」
「何だよ、直ぐにムキになるなって。ああ、今は違うか。俺の顔を見て必死に此処まで追いかけに来たからストーカー野郎か?」
『なっ、何だと……!?』
いきなりアイツにストーカー呼ばわりされた。其処で焦ると言い返した。
「ふざけるな、誰がストーカーだ!」
「嘘つくな。知ってるんだぜ、お前がうちのクラスを通る時に俺の事をずっと見てたのを――」
その言葉に胸が一瞬、ドキッとする。
「あっ、あれは……!」
其処で言葉を詰まらすと焦った。そして、相手から目を反らした。
「何だよ?」
少年が言ったのは事実だった。あの時は自分でも何故か、遠くから顔を見ていた。それを本人に言ったら益々、変な奴だと思われる気がした。
「おっ、お前こそ俺の方を見てたじゃないか……!」
「は?」
「そっちこそ人の事が言えるのかよ…――!?」
そう言って思わずムキになって言い返した。少年は目を丸くさせるするとクスッと笑う。
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