第8話―愛と戯れ―(前編)

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「僕には何の事かさっぱり分からないけど、あの人の話しじゃ無さそうだね? それにキスって聞こえたよ、もしかして好きな人の話し?」 「違う! 誰があんな奴…――!」  成田が興味津々な顔で聞いてきた。ハッキリと否定し、『誰が好きになるかよ!』と言って再び橋の上を歩き出す。 「胤夢君、そこを詳しく教えてよ〜! 誰か好きな人がいるの? その人と今付き合ってるの? ねぇ、隠さないで僕にも教えてよ~!」 不機嫌な顔をしながら前を見て歩いた。あの時のキスを思い出すと、嫌でもあの男の顔が目に浮かぶ。 「大体、直ぐムキになる所が子供(ガキ)なんだよ……!」 「まーまー、落ち着いて。そうだ胤夢君! この先にお洒落なカフェがあるからそこでパフェ食べよう♡」 「人で行ってろ、俺は先に帰る!」 「ちょっと僕に冷たくしないでよ。どうして、今日はそんなに不機嫌なのさ〜!?」 そう言うと横でポカポカして叩いてきた。そこで自然に溜め息をついた。すると上着のポケットからスマホの鳴る音がした。それを何気なく見て確認すると1件のメールが届いていた。送ってきた相手の名前を見るとクスッと笑う。そこで返信すると後ろを振り向いて伝えた。 「悪い、用事が出来たから此処で帰る。じゃあな!」 「用事って?」 「ああ、ちょっとな――」 キョトンとした顔で聞いてきた。俺は詳しく話さないで、ただ一言『人に会う』とだけ話す。 「ふーん。わかった。じゃあ、またね!」 橋の上で澄春とそのまま別れた。その後、近くを通るタクシーを拾って目的の待ち合わせ場所に向かった。  駅前の通りに学生達に人気のパステルカラーの喫茶店があった。其処の入口でタクシーから降りると扉を開けて中に入った。店内は女子や学生達のカップルで席は埋め尽くされていた。真ん中の窓際の席に、髪の長い金髪の女子生徒がいた。彼女は自分の爪を綺麗に磨きながら俺が来るのを待っていた。  「あ、胤夢君! やっと来てくれた〜♡ 愛理沙(ありさ)ね、どうしても貴方に会いたかったの!」 「別に構わない。俺も会いたかったから」 「本当!? 嬉しい〜♡ きっとそう言ってくれると思ってた! ねぇ、早くここに座ってよ!」 「ああ――」  彼女に急かされると前の席に座って足を組む。
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