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「僕には何の事かさっぱり分からないけど、あの人の話しじゃ無さそうだね? それにキスって聞こえたよ、もしかして好きな人の話し?」
「違う! 誰があんな奴…――!」
成田が興味津々な顔で聞いてきた。ハッキリと否定し、『誰が好きになるかよ!』と言って再び橋の上を歩き出す。
「胤夢君、そこを詳しく教えてよ〜! 誰か好きな人がいるの? その人と今付き合ってるの? ねぇ、隠さないで僕にも教えてよ~!」
不機嫌な顔をしながら前を見て歩いた。あの時のキスを思い出すと、嫌でもあの男の顔が目に浮かぶ。
「大体、直ぐムキになる所が子供なんだよ……!」
「まーまー、落ち着いて。そうだ胤夢君! この先にお洒落なカフェがあるからそこでパフェ食べよう♡」
「人で行ってろ、俺は先に帰る!」
「ちょっと僕に冷たくしないでよ。どうして、今日はそんなに不機嫌なのさ〜!?」
そう言うと横でポカポカして叩いてきた。そこで自然に溜め息をついた。すると上着のポケットからスマホの鳴る音がした。それを何気なく見て確認すると1件のメールが届いていた。送ってきた相手の名前を見るとクスッと笑う。そこで返信すると後ろを振り向いて伝えた。
「悪い、用事が出来たから此処で帰る。じゃあな!」
「用事って?」
「ああ、ちょっとな――」
キョトンとした顔で聞いてきた。俺は詳しく話さないで、ただ一言『人に会う』とだけ話す。
「ふーん。わかった。じゃあ、またね!」
橋の上で澄春とそのまま別れた。その後、近くを通るタクシーを拾って目的の待ち合わせ場所に向かった。
駅前の通りに学生達に人気のパステルカラーの喫茶店があった。其処の入口でタクシーから降りると扉を開けて中に入った。店内は女子や学生達のカップルで席は埋め尽くされていた。真ん中の窓際の席に、髪の長い金髪の女子生徒がいた。彼女は自分の爪を綺麗に磨きながら俺が来るのを待っていた。
「あ、胤夢君! やっと来てくれた〜♡ 愛理沙ね、どうしても貴方に会いたかったの!」
「別に構わない。俺も会いたかったから」
「本当!? 嬉しい〜♡ きっとそう言ってくれると思ってた! ねぇ、早くここに座ってよ!」
「ああ――」
彼女に急かされると前の席に座って足を組む。
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