劫火

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「焼き尽くすのは面白ぇ! 水や雷なんて地味だ、やっぱり炎の竜巻が派手で面白えな!」 「水は使い道が多くて便利ね。だって人間の体は七割が水なんだから。破裂させるのなんて簡単じゃない。血液だって操れるんだし」 「人を殺すことばかり考えてる奴らはダメだな。雷で主要施設を壊せば勝手に共倒れするに決まってるだろ。食べ物も武器も全部ダメになるんだから」 「私に癒しの力がそなわって良かった。みんなを助けることができる」  彼らは強い。ただ力をたれ流すだけでなく、きちんと戦術を考えて戦う。ひとつの部隊を倒せば次の部隊が来る。二つ、三つ、四つ。やがてひとつの軍を倒し、ひとつの国を滅ぼす。 「ねえ、いつになったら戦いは終わるの? こんなに戦っているのに」  戦いは、終わらない。人の戦いに終わりなどない。どんなことでも理由をつけて戦う。  ねえ、私たちは本当に生きるために戦っていますか? それとも戦うために生きていますか? ……戦うために、生かされているのですか? 「戦いが終わった時、楽園が待っているのです。誰もが平和に、笑顔で、飢えることのない世界。誰にも脅かされず、誰も傷つけあわない優しい世界」 甘い言葉は、薬となる。 【第一段階 薬が効きにくくなり量を求める】 「ちくしょう、また炎が弱くなった! もっとよこせよ!」 「敵を狩る数に比例すると何度言えばわかるのですか、アムル。あなたが昨日狩った数はたかが小隊二つです」 「炎が出ねえから倒せねえんだろ!? 前借させろよ!」 「前は十人以上いっぺんに破裂させることができたのに、今は二人だけ。少なすぎる、これじゃあ敵を倒せない」 「戦場を駆け抜けて数を稼ぐしかありません。レティ、次はこの場所です」 「遮蔽物が何もないじゃない! 死ねって言いたいの!? 先に薬をちょうだい! じゃないとただの的じゃない!」 「全然雷が目的の場所に落ちなくなった、最悪だ!」 「我が軍の施設を火災発生させてしまうとは。大きな失態です、レオナルド」 「あんな近くに基地があるなんて聞いてない!」 「あなたは後方支援にまわします」 「な!? ただの歩兵じゃねえか!」 「敵を倒す数が減っているのならまだしも。施設ひとつ潰した罰はこの程度ではありません。過去の成績から最大限の譲歩です。嫌なら薬の支給はなくします」 「全然治らないの! この間は……ベイクが死んだ、助かったはずなのに!」 「一日に二十人治すノルマが達成できていませんね、モーリー。骨折も治せないなど話になりません」 「薬が足りないの、もっとください! じゃないと死者が増えます!」  もっと、もっと薬を。そうしなければ成果があげられないから。
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