劫火

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 一人の大人が少年の背中に薬弾を発砲した。何発も何発も。しかし、少年はケロリとしている。 「馬鹿な……何故、白の薬が、効かない! ぎゃあああ!」 「なんだそれ、薬の効果を暴発させる薬か? 俺に効くわけないだろ、薬なんて一回も飲んだことないし。……それでトドメをさしてきたわけか、生き残っていた人たちを。へえ~」  少年の目つきが鋭くなる。ひ、と怯えた時には遅かった。撃った男は青白い炎の柱のような炎により炭となった。赤い炎よりもはるかに温度が高い、青と白の炎。 「ここはまるでホメオスタシスの中にいるみたいだ。何かを変えようとしても自然と何もなかったかのように調整される。人間の体内か? なら、オクスリが必要だよな?」  少年は倉庫から持ってきた薬を鷲掴みにした。大人は飲んではいけない。何故なら薬の受容体がなく、飲んだ瞬間暴走状態となるからだ。一粒でも飲めば致死量であるのに、ものすごい量のその薬は。能力者たちが見たら泣き叫んで喜びそうなくらい大量に保管されていた。 「他の色は全部燃えちまったか。ま、いいか。赤が残ってるから」  管理者を仰向けになるよう蹴り飛ばして、下あごを無理やり下に引っ張った。怯えた表情の大人に、子供は冷めた目で見降ろす。 「最初から自分でやれよ。一人でオクスリも飲めないのか、今時のオトナは」  右手に大量に握られた赤い薬を、涙を流す管理者の口に無理やりねじ込んだ。次の瞬間、爆音とともに青い炎の柱が管理者を焼き尽くした。
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