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「なにがかと言えば、クラス委員会についてだよ。クラス委員会の活動について、わかったかってこと」
俺が言うと天乃は表情を変えず、「それは理解できた」と答えた。
「つまらないことを聞くな。わからなければ、生徒会長に都度質問をしている」
「そりゃあまあ、そうかもしれないけど、あの緊張感のある場で、質問するのも気が引けるだろ」
俺の言葉に、天乃は首を傾げる。
「地村、聞くは一時の恥という言葉を知っているか?」
「それぐらいは知っている」
「ならば、気が引けるから聞けない等という考えには至らないはずだ。それとも、まさか――」
天乃が眼鏡の奥の目を細め、俺を見上げる。
「わからないことがあっても、私に訊けば良い等と思っているわけじゃ――」
「ない!」
俺は断言して言う。
いくらか声が大きかったか。
周りが一瞬シンとして、視線が集中しているのを感じる。
天乃がショートボブを回し、小刻みに頭を下げる。
それからまた俺を見上げ、溜息をつく。
「恥ずかしいから大声は止めてくれよ」
お前のせいだ、と喉元まで出掛かった言葉を、俺はぐっと飲み込む。
そんな俺の様子を見ながら、天乃は口の端を少し上げ、
「ただまあ、わからないこともある」
「ん? そうなのか?」
俺は天乃を見やり訊く。
天乃は「ああ」と頷き、わざとらしく腕を組む。
「わからないこと。それは、地村とどう接していけば良いのかということだ」
「なっ・・・・・・」
なにを言っているのだ。
奇遇なことに、まさに数秒前に俺が天乃に思っていたことではないか。
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