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ライバル
高塚 ひな 16歳。高校のバドミントンチャンピオンだ。今年のインターハイで優勝した。
今日は全日本選手権。決勝はまた柳沢 なつ 16歳。
実はこの二人、小学生の頃から全国大会の決勝、もしくは準決勝辺りで必ず戦う事になっている。
同世代で、同じくらいの力量だと小さい頃から何の試合に出ても、どこでやる試合でも、必ず上位戦で戦う事になる。
もちろん、お互いに相手の研究はしているし、監督、コーチ陣も作戦を立ててはいるが、今の所決勝での結果は五分五分だ。
準決勝で当たってしまえばそれが事実上の決勝戦となり、準決勝の勝者が優勝する。
個人戦のあるスポーツの世界では、同じ年齢で同じ力量のライバルがいると、ひなとなつのように大学を卒業するまで延々と戦う事になる。
団体競技とはまた一味違うのだ。
これは運命のいたずらとしか言えないような二人の出会いとなる。
たとえチームが同じになっても、個人戦は一人で戦うので、結果、決勝で再度戦う事になるのだ。どちらかが引退するまで。
周囲の同年代の選手は気の毒だが、よほど力をつけない限りはこの運命の二人には近づくことができないまま終わることが多い。大体同じ年齢で始めているのになぜ差がついてしまうのかは運命の神のみぞ知ることだ。
運命の二人を引き離すのは大抵下から上がって来た若い選手たちだ。
学年で分けられている学生の試合ではなかなか戦う機会もないが、プロリーグに入ったり、大学生を過ぎれば、個人戦はシニアの部で戦う事になるからだ。一足先にジュニアの部を抜けて、シニアで戦う選手も出てくる。
しかし、その選手たちにも大抵は、同学年、もしくは一つ下の学年か一つ上の学年に小学校からずっと戦い続けている選手がいるのだ。
運命の糸は脈々と続く。
しかし、決勝戦で戦えるのは運命が決めた二人だけ。そして勝ち抜くのは勝利の女神が微笑んだ一人だけなのだ。
スポーツに限らず、勝負事ではどこの世界でも熱い戦いが続いている。
将棋の世界も、今、熱い戦いが続いている。藤井さんといえばいま日本中で知らない人はいないだろう。
あの若さで、年齢が倍も近い人たちをなぎ倒し、トップに君臨するのだ。
どれだけの努力。どれだけの研鑽を積んで盤の前に座るのだろう。
怖くはないのだろうか。
勝負の世界は戦争をしないでルールにのっとって戦争をしているようなものだと私は思う。
戦争は悲しみや憎しみしか生まないのだ。
ルールのある戦いで、運命の二人を結び付け、美しい決勝戦、美しい勝負を見ていたいと願う。
【了】
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