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桜はかく語りき
樹齢を100年越えた樹には精霊が宿ると云われている。
私は桜の精。
長い永い時間をかけて私は私をこの町に根付かせてきた。根付いた私は咲き続けた。
美しく。
美しく。
人が望むままに。
私の生は人と共に在った。
彼らは優しく、愚かで、とても、とても、弱かった。
桜の花が咲いては散るように、彼らの命も芽吹いては散っていった。散った命は戻ってこなかった。
たった一度の人生という。死んでしまえばそれで終わり。なんて儚い人の夢。
それでも私は咲き続けた。
それが私の生き様よ。私は咲き続ける。
これからも。
この町と人がある限り。
私は咲き続ける。
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