桜はかく語りき

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例えばこんな世を見たわ。そう、四つ目の話よ。 人という生き物は孕むことと孕ませることがお好きみたいね。 相手に欲を植え付けて、相手に欲を向けさせる。愛されたい、愛したい。愛してる、愛されてる。 その結果の一つが妊娠。 相手との子なんだからきっと愛しい。きっと大切にできる。 じゃあ教えて。 何で親が揃って存命なはずなのに、夜に一人で家にいる子がいるのか。 何で産んだ子を箱に入れて外や押し入れに放置する親がいるのか。 何で子殺しがあるのか。 何で親殺しがあるのか。 何で、人は殺し合うのか。 いつの時代も人は人に刃を向けるということを止めやしない。人はすてる生き物なのよ。自分以外を切ってすてる生き物。いいえ、もしかしたら自分さえも蔑ろにしてしまっているのかもしれない。 私からすれば人は捨てすぎる。もっと背負って生きるべきだわ。 歴史も、人の想いも、責も、夢も希望も、絶望も、現実も。全てを背負って生き、死んでいく。それが人の在るべき姿ではないの? それこそ孕むだけでは済まないくらいに、人は負うべき咎をその性に持ち続けている。 その子たちもそんな性を持っていたのかもしれないわね。そう、人は運命と呼ぶのでしょう。
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