双生

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どうやって助かったのかは誰も知らず。 ただわかったのは双子が二人揃っていたから生き延びたということ。一人ならばそれは叶わなかった。 流れ着いた別の村で二人は育った。 そして、まぐわった。 彼らは互いに運命の人だったの。唯一であり、自分の欠けた存在。 だから惹かれ合った。だから愛した。 だからまぐわった。 それは禁忌だった。 その村でも双子は卑しい穢れた存在として殺された。今度こそ。 首を跳ねられた双子は別の場所へ埋められた。 それからよ。 双子が殺される度に、殺した村が双子を産むようになったのは。 双子という存在は望まれなかった。一度に育てられるのは一人の子が限界だったからよ。二人も子がいれば村は飢える。 ならば間引くしかない。 片方残して片方間引く。 それで済めばいい。 でも双子は呪った。 片割れを奪われた子は後を追った。 子を絶やした村は次の子を期待する。でも次に産まれる子も双子だった。 その村は双子しか産まれなくなった。双子を養う力は村にはない。 だから村は双子を二人揃えて間引くことにした。間引かれた二人は埋められた。 村には双子さえ産まれなくなった。 これで、終わり。 ごめんね、まだ続くのよ。 間引かれたはずの双子、どうなったと思う? 土の中から何処かへ消えたわ。 埋めて数日、夜になると土の中から変な音がするの。 ずる、ずる。何かが這う音。 まるで蛇が這い回る音。 そして何処かへ去っていく。 その音は双子を埋めた辺りから聴こえたそう。だから何かあったのかと掘り出した。 掘り出されるはずの屍体は何処にもなかった。代わりにあったのは大きな通路。二つの屍体を繋ぐ通路よ。 その先には二人が通れる程度の通路が続いてる。 誰かが言ったわ。 あの双子は二人で地中深くに潜ってしまったんだ、と。 何度も産まれてきた双子。その魂は同じものだったのかもしれない。同じ双子が片割れを探して生まれ変わってきていたのかもしれない。 二人で手を繋ぎながら生きていきたかったのかもしれない。村人は思ったわ。 でもどうすることもできなかったのよ。 二人を育てることはできなかった。 二人を別けて、せめて養子として別の人生を送れたらよかった。でも彼らは惹かれあってしまった。 どんなに離しても互いを探す。それこそ、頭を失った死体となった後でさえ。 それでも二人の子は心のどこかでは悪いことだと思っていたの。村の人たちに、世間さまに顔向けができなかった。双子の親が倉の中で彼らを育てたように。 双子は生きたかったのでしょうね。 でも二人では生きていられない。一人でも生きていられない。 彼の双子はそういう運命だったのよ。 本当はね、呪ってなんかいなかったのよ。 ただ片割れにあいたい。 片割れと一つになりたい。 一つに戻りたい。母親の胎内で眠るよりも前と同じように。 そう願ったから、彼らは何度も生まれ変わっては同じ胎内に宿るの。 全ては過去の話よ。 あの双子はもう産まれてこない。そう、それでいいのよ。 あの子たちはあるべき姿を手に入れた。 一つの魂、割かれて二つに。 二つの命、まぐわい一つに。 絡み絡まり、ほどけぬよう。二度と双子として産まれ落ちぬよう。 双子はそれでよかったのよ。 でも困ったことが残された。 そう、あの通路よ。 双子が何処かへ消えた時に通った地下通路。 七不思議が四つ、いざ参らん。
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