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巡って廻った双子は人々の前で口を大きく開いた。 「さあ、お通りなさい」 人々はわかっていた。その口を潜って、通路を通り抜けた先にあるものを。先なんて、未来なんてないということを。 人々は己の意思で地上通路に入った。 誰も、地上へは戻らなかった。 それでいいのよ。 双子は火の嵐から人々を導いた。 かつて双子が通った道よ。 地上には居場所がない。 冷たく、暗い道。 手を繋いで。 ほら、冷たく硬くなった手を繋いで。 私たちは一人じゃない。 あなた達が向かうべきなのは、地下通路を通ったその先よ。 ほら、双子が導いてくれる。 その胎に体を食らって、あなたを導いてくれる。 それは双頭の蛇。 二つが一つになった、彼らの運命。 一つの体に二つの頭。双子は二人のまま一つになった。 あの子たちが望んだのは地上でも地下でもない。その過程よ。 一つの頭はこの世へ。一つの頭はあの世へ。彼らは口を開く。息をしようと。誰かを招こうと。 自分達のように誰もがいつかは地下を目指す。 死の先に、別の世界を見てしまう。 それは孤独よ。 二人で同じ世界は見られない。 双子は独り子にはなりたくなかった。 だから二人で一つになりたかった。 きっとアナタモそうなのよ。 独りだから二人を望む。 二人だから一つを望む。 通路を通ってみて。 それをしってる双子があなたの余計なものを全て剥がしてくれるわ。 どちらの口から出るにしてもそれは要らないもの。 双頭の蛇の長く続く胴体は地下を這う。 巡る。 廻る。 ぐるぐるめぐる。 嗚呼、お腹が空いてきた。 命を残して生きなさい。 魂を遺して逝きなさい。 あの蛇は運命の双子。 生まれた瞬間からこうなることが決まっていたの。だって運命だったんだから。 その通路を通り抜けるには温もりなんて必要ない。 双頭の蛇が血肉を剥ぎ取ってしまうのだから。 これが七不思議の四つ目、「地下通路」。 双頭の蛇が護る、あの世とこの世を繋ぐ道。 お通りなさい。 さあ、お通りなさい。
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