桜はかく語りき

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

桜はかく語りき

樹齢を100年越えた樹には精霊が宿ると云われている。 私は桜の精。 長い永い時間をかけて私は私をこの町に根付かせてきた。根付いた私は咲き続けた。 美しく。 美しく。 人が望むままに。 私の生は人と共に在った。 彼らは優しく、愚かで、とても、とても、弱かった。 桜の花が咲いては散るように、彼らの命も芽吹いては散っていった。散った命は戻ってこなかった。 たった一度の人生という。死んでしまえばそれで終わり。なんて儚い人の夢。 それでも私は咲き続けた。 それが私の生き様よ。私は咲き続ける。 これからも。 この町と人がある限り。 私は咲き続ける。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!