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運命のカルディナ
必ず運命のふたりを結びつけます――その結婚相談所では、そのような売り込みがなされていた。
いわく、どんな利用者にも“必ず”理想の結婚相手を見つけてくれるというのだ。それも極めて迅速に。そんなこと可能なのだろうか、とあたしは半信半疑だった。
それでも利用を決めた理由は単純明快。いい加減、母親に姉と比べてねちねちと嫌味を言われたくなかったからである。
今年四十二歳になるあたし、西田文子に恋人はいない。というか、過去に誰かと付き合ったことが一度もない。当然、この年齢に至るまで処女である。OLの仕事をしながら東京で暮らしているわけだが、ここ最近母親との電話が億劫でたまらなくなっているのだった。
理由は、姉に三人目の子供が生まれたこと。四十三歳でまだ子供を作るなんて後先考えてなさすぎでしょ、と思うが、どうやら親にとってはそうではないらしい。三人目の孫の誕生を、心からお祝いしている様子だった。
あたしにとっては忌々しいことこの上ない。孫可愛いわね、で話が済むならまだしも、決まってあたしの方に流れ弾が飛んでくるからだ。
つまり。
『亮子は結婚して、子供も三人目で、本当にいい家庭を作ってると思うわ。それに比べて文子、貴女まさか一生結婚しないつもりなの?確かにもうとっくに行き遅れの年ではあるでしょうけど、だからって一生身を固めなくていいなんて話ではないのよ?結婚して、子供を作って、初めて人は一人前になれるものなんだから』
年寄らしい、なんとも古臭い考え方だ。思わずあたしは怒鳴り返してしまったのである。
『姉さんとあたしは関係ないでしょ!?いちいち比べないでよ!大体、四十二歳なんて年で子供作る方がどうかしてるわ!どんだけ毎晩お盛んなのよってかんじ、みっともない!』
『まあ!なんてこと言うの、文子!』
『うっさいわね、ほっといてちょうだい!!』
昔から、姉のことは大嫌いだった。何をやるにもそつなくできる、いわゆる天才肌。それでいて、あたしと違ってお父さんによく似た綺麗な顔をしているのがまたうっとおしい。あたしはお母さん似の不細工と太りやすい体質のせいで、男の人に一度もモテるようなこともなくて苦労しているというのに。
――あんたのせいで、あたしはこの年になっても独り身なのに!いい加減にしてほしいわ!
とにかく、ぎゃふんと言わせてやりたい。
姉なんかよりずっと若くて、イケメンで、経済力のある男を捕まえるのだ。そのためならば、手段など選んではいられなかった。
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