エピソード 3

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かつて時の内閣が音頭を取り、国内経済の立て直しの目玉として導入されたAIロボットは、人員不足の生産現場で威力を発揮し、国内市場におけるモノの供給不足の解消に貢献してきた。 それに気を良くした日本政府はさらに、消費者としてのAIロボット導入に踏み切ったのだった。 少子化に始まった人口減少、それに伴う国内経済の縮小が問題視されていたが、ロボットに消費させたら、その分需要が高まり、景気の回復につながるという目算があったのだろう。 店内のスタッフとしてだけではなく、客としてAIロボットがやって来ることで、現にオレの店も昨年対比100 %超えを果たしている。 異文化をバックボーンにして言葉の通じないインバウンドへの対処に困るくらいなら、黙々と店の料理を待ち、腹かどこか分からないが食い物を詰め込むと、訳もなく長居せず帰っていくロボットは、もしかすると上客といえるかもしれない。 たまに面倒くさいロボット客が渋い点数をつけたあと「本部に連絡入れるぞ」とセンスを疑う言動で脅迫してくるが、俺は相手にしていない。 「どうぞ。お好きになさってください」といって、お見送りする。 俺の仕事は、俺自身が評価するから、客や本部から何を言われようと関係ない。 悪いが、そのような脅し文句に縮み上がるようなサラリーマン店長とは訳が違うのだ。
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