エピソード 4

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「だが、盲点があったな。エアコンだ。ロボットは室温など関係ない。人間の客がいない時は消すようにしてくれ」 「いやいや、俺も人間なのだが」 「いいかね? 君一人のために、エアコンを掛けたら数字が合わないのだよ」 数字が合わないのは、「修繕費」という名の莫大な人件費が存在するからだ。 AIロボットは中古品ばかりで、初期費用は安いが修理費が尋常でない。 中年以降の生身の人間がそうであるように、基本的にどこか不具合を抱えたまま、業務をこなしている。 定期点検のある保守契約代もケチっているから、故障しやすいし、いざというときの修理代が割高になる。 それでも辛うじて営業利益は取れているのだが、社員に対してさっぱり還元がなく、その利益を社長が経費として自分の趣味のゴルフやマリンスポーツに充ててしまうため、大卒の初任給平均を下回る給与に白けた生身の人間の店長クラスがどんどん辞めていく。 無職に長く悩んだこともある俺は、目先の稼ぎよりも仕事があること自体に意義を見いだしてはいるが、フェアでないことには憤りを覚えている。
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