act.1

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act.1

私の不幸はあの人から始まったといっても過言じゃない。 忘れたくても忘れられない火種を植え付けたまま突然消えてしまったあの人が何年経っても私の中で燻り続けているのだ──。 「ねぇ、佐崎さんっていつまでいるのかなぁ」 「当分辞めないんじゃない? なんか独身貴族謳歌していますってオーラ出まくりだし」 「なんかさぁムカつくよね。ババァのくせに」 「ババァでも美人なんだから仕方がないよ」 「美人だったらなんでサッサと結婚しないのよ」 「さぁ? もしかして実は見かけだけよくて嫁にするにはよくないところがあるのかもね」 「あーありそう! 美人で仕事が出来て性格いいなんてパーフェクト女、この世の中にいるわけないもん!」 「だよね。絶対訳ありだよ」 「……」 (そうか……あの子たちは私をそんな風に思っていたのか) 女子トイレで話されるのは今も昔もよくない悪口のオンパレードだ。 個室トイレに籠っているタイミングが悪ければ知りたくなかったことまで知ってしまうのだった。
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