act.1

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ようやくトイレから出て行った後輩社員たちの本音を思わず知ってしまい、ため息しか出ない。 (ババァかぁ……まぁ28だもんね) 手を洗いながら目の前の鏡でジッと己を見つめる。自分では年相応の普通の顔だと思っている。 (でもこの顔のせいで私は……!) グッと唇を噛んで軋んだ胸をギュッと抑えた。 「誰も好き好んで独身貴族やってんじゃないわよ」 呟くように低く唸ってからトイレを出て業務に戻った。 「あ、佐崎さん、丁度良かった。今バンクーバー支社から電話が来ているんだけど対応お願い出来るかな」 「分かりました」 主に海外の企業が取引相手の商社に勤務すること6年。 私、佐崎結子(ささきゆうこ)は独身でババァだけれど英語が堪能なので会社にとってはそれなりに重宝がられている。 (やっぱり手に職をつけていると食い逸れなくて助かるわ) 幼い頃から色んな習い事をやって来た。親に勧められるままやって来たそれらはあっという間にある程度の成果を上げた。 教えられる事はすぐに吸収して自分のものになった。加えて器量も良かったので男子にはモテモテだった。 だけど女子からはひがみ根性から私を苛めるか、モテる私のお零れを狙う計算高い女子に表面上の付き合いをされるかのどちらかだった。 小中学校では辛い思いを沢山して来た。しかし高校に進学してから周りの環境が少し変化した。
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