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才色兼備、頭脳明晰な成長を遂げた私に男子からは更にチヤホヤされ鬱陶しいくらいに纏わりつかれ、女子からは腫物を扱うか如く遠巻きに眺められるだけだった。
子どもっぽい苛めはなくなったけれど、その代わりに外面ばかりを気にして自由に身動きの取れない生活に嫌気が差していた。
そんな生活を少しでも変えたいと思い、変装して小さな食堂で皿洗いのバイトを始めた。長い髪を引っ詰めて伊達眼鏡をかけて汚れても平気な地味な私服で仕事に励んだ。
そのお店の従業員は年配の方が多くて私を見かけで判断することなくとてもよくしてもらった。
その従業員の中にひとりに歳の近い大学生のアルバイトの男性がいた。
鈴木祐輔という名前で黒縁眼鏡をかけ厚い前髪のふくよかな体型の人だった。
最初はその如何にもオタク風の容貌に近寄り難い印象を受けたけれど「名前、似ているね」という何気ない彼からの会話で急速に仲良くなった。
鈴木さんは貧乏学生で掛け持ちでバイトをしているといった。
自分は貧乏だしこの体型だから女の子にはモテなくてとあっけらかんと話す彼のことを少しずつ意識し始めるようになった。
見かけなんて関係ない。貧しくても明るくて優しくて勤勉で真面目な彼を知れば知るほどすっかり彼に心を奪われてしまっていた。
「好きです、つき合ってください」
初めての恋。
初めての告白。
精一杯の勇気を振り絞って鈴木さんに告白した。
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