第1話「壁にキスとは変わってますね」

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「まったく仕方ないなぁ。ほら、葉緩。手を出せ」 「ああああっ! そんな恐れ多いことは出来ません!」 「いいから! ほら、このままだと目立つぞ?」 「はっ! それはダメですぅ」 桐哉は葉緩の魂の主。 その手を煩わせることは断じて許すことが出来ず、葉緩はぐっと現状をこらえる。 「……葉緩ちゃん、数学サボりがちなんだからちゃんと出ないと」 「数字を見ると目が回るのです……」 柚姫の言葉に逃げ道を狭められる。 葵斗から脱出したい。 数学からも逃げたい。 だが桐哉に助けを求めるのは葉緩の矜持が許さない。 苦悩に唸っていると、桐哉と柚姫が目をあわせ、笑い出していた。 「なんで笑うのですかぁ!」 「……葉緩、黙って」 ーーモゾモゾ。 「んっ……ちょっと! どこ触ってるんですかー!?」 暴れる葉緩を抑え込み、擦り寄るように抱きしめてくる葵斗。 何をどうしたらよいかわからなくなり、目の前がグルグルと回転していた。
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