私の出自

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 一人で生きていくためにも、(わたくし)は将来、職業婦人として学校の教師となるべく、女子高等師範学校(※学校の先生になるための学校)へ通っています。  師範学校に入るまでは、女中さんも一人いたのですが、家事もできるようにならなければと思い、お父様にお願いして本邸の方へ移っていただきました。  学校が終わって家に帰ればお母様と一緒に食事を作ったり、お掃除やお洗濯などして、今では一通りできるようになってきました。  お父様は「花嫁修業している」と勘違いなさっているようですが……。  (わたくし)は結婚なんてしませんからね!  最近は、なんとなくお父様の肌着なんかは触れたくなくて、たまにあるお父様の分のお洗濯はお母様にお願いしています。  お父様とはあまり話もしたくなくて、ほとんど会話もしません。  ですから、お父様は(わたくし)のご機嫌をとるように、なんでも欲しいものなどはくださいます。  ペガソスも、そのうちの一つだったのですが、感謝はしておりますのよ。 ……ただ、態度に出ないだけで。  昔は、お父様が家にいらっしゃるのが嬉しくて、抱きついてお出迎えしていたのですが、今だと抱きつくなんて到底考えられません。  お父様にさえ、抱きつくこともない(わたくし)が、これまで男性に抱きしめられたことなんて、もちろんありません。  だって、『西洋のバケモノ』です。  変わった髪の色と、目の色で誰も寄ってきません。  それなのに、あの方は……たやすく(わたくし)に近づいて、だ、だ、抱き上げて……  (わたくし)の人生は、あの日を境に変わりました。  過度に自分を卑下(ひげ)して生きてきた(わたくし)。  少しだけ、自分を認めてあげることができるようになったのは、『あの方』にお会いしたのがきっかけです。 ーーーーーーーーーーーーーー
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