第1話 大事な腕

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第1話 大事な腕

 終わった……と思ったのが、正直な気持ちだった。  元から、不運体質ではない。むしろ……幸運だったと思う。めちゃくちゃではないけれど。 (……だからって、これはあんまりだ)  私は……自分の腕に巻かれているギブスを見て、またひとつため息を吐いた。  怪我をしてしまった。  だが、ただの怪我ではない。  店の買い出し帰りに……車が突っ込んできて、大荷物を抱えていた私は巻き込まれてしまい。骨折はなかったが……利き腕の方の神経が傷ついてしまったのだ。  しかも、腕が動かないくらいに。  日常生活もだが……料理店に勤めている人間としては、絶望的な出来事。  反対の手は生きていても……料理は片手で作業するのが難しい。  だから……店でなにも役に立たないと、退院後に師匠である店長に決意を話して……退職してきた。  しかし、家でいるのも辛さなどを実感するだけだと公園には来てみたが……余計に虚しさを感じた。  何時間もベンチに腰掛けていると……いかに、五体満足の生活が素晴らしいかと……羨む気持ちしか出来なかった。  これからの片手での生活をどうすれば良いか。
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