きっかけ

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秋の風が気持ち良い季節。 土曜日の昼間、お昼ご飯を食べさせてから、 大輝を隣町にある習い事のサッカーグラウンドまで、車で送り届けて、スーパーで1人買い物をしていた。 仕事先のスーパーではない場所で週1回は、買い物がしたいからだ。 考えごとをしながら、ぼんやりと歩く。 その日の晩ご飯の献立だけでなく、3日分ぐらいの献立を考えながら、食材を選ぶのだから、主婦の頭の中は、いつもフル回転している。 そりゃあ、ぼんやりした顔に見えるのかもしれないが、頭の中では、献立表と冷蔵庫の食材の残りが写真のように登場していて、見事に組み立てられていく。 「あ、お醤油! もうなかったなあ」と時々、独り言が口から溢れる。 一目散に、調味料売り場へ向かい、カゴの中に納められ、ようやくレジの列に並ぶ。 他に買い忘れはないか? と、最後の確認をしながら、キョロキョロ近くの食品棚をチェックする。 (良し! 今日は、これで大丈夫そうだ) と、その時、 2列向こうのレジに並ぶ、背の高い男性の姿が目に飛び込んで来た。 「え?」 (嘘っ! 似てる!)
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