きっかけ

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娘さんをあやす姿にも優しい雰囲気が溢れている。 でも、なぜか奥様との会話には、気のせいか笑顔がないように見えた。結局、彼の横顔が見えただけで、真正面からは見えなかった。 ようやくレジは、私の番になった。 レジの方とやり取りをしている間に、彼らは帰ったようだ。 まだ、この辺りに住んでいるのだろうか? また、会えるのだろうか…… 私は、いったい何を期待しているのだろう。 その出来事から、妙に斗真のことを思い出す時間が増えてしまった。 今の家庭生活に不満があるわけではない。 旦那様は、仕事熱心で土曜日も働いてくれているし、息子の大輝も元気で優しい子に育っている。 表向きは、仲の良い理想的な家族なのだろう。 たった1つ、セックスレスだということを除いては…… 私は、大輝に兄弟を作ってあげたかった。 なのに、大輝を出産後、旦那様は、全く私に興味がなくなってしまったのか、夫婦の営みはパタリとなくなった。 もちろん、出産後すぐは、私も育児と家事の両立が大変で、そんな気にもならなかった。 でも、大輝は、もう10歳。その間に幾らでもチャンスは、あっただろう。もう、2人目は諦めた。
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