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理不尽な世界から(前編)
「時空航行する平行宇宙船」
時空振動が発生した
平行宇宙船に衝撃が走る
「振動で転げる乗組員」
ピッピーピッピー・・・
船内に警報音が鳴り響く
「操縦室(船長と航海士)」
「おぉ、おぉ」
「う~ひゃ~」
船長と航海士が叫び声を上げる
「操縦室(船長と航海士)」
急速に振動が減衰し、船内に静寂が戻った
「マグニチュードは幾つだぁ?」と訊いたのは船長
「9.87で~す」と答えたのは航海士
「参ったなぁ」
「そ~すね」
「現在位置の測定!」
「は~い・・・現在位置は第567平行宇宙の上空で~す」
「ずいぶん飛ばされたなぁ」
「そ~すね」
「帰りの燃料は足りるかぁ?」
「無理で~す」
「だろうなぁ・・・仕方ない、着陸の準備に入ってくれ」
「了解で~す」
「地球の或る海岸」
海岸から僅かに付き出た小さな岬の上空に突如として平行宇宙船が現れ、ゆらゆらと降りて着陸した
「操縦室(地図)」
「多世界解釈地図を表示してくれ」
「了解で~す」
「ここはどこなのかなぁ」
「日本帝国の領土内で~す」
「ほぉ、直ぐ傍にあるのは量子力発電所かぁ」
「ちょうどいい~すね、量子燃料をパクっちゃいましょう」
「そう云う訳には、いかんなぁ」
「ダメ~すか」
「帝国政府へ量子燃料の供与を正式に依頼する」
「そ~すか」
「AIフォーム226文書を量子暗号化せずに平文で帝国政府へ送信してくれ」
「了解で~す」
「操縦室(通信文)」
「船長~返信で~す、中央ディスプレイに表示しま~す」
帝国政府宰相から来た返信には長い時候の挨拶の後に遜った是また長い文面があった
簡潔に言えば、量子燃料の供与は出来ない、と云う事である
理由は、量子燃料について全ての決定権を持つ量子燃料サイクル機構の理事長が反対していると述べている
「操縦室(船長と航海士)」
「ど~しますか」
「量子検索を掛けてくれ」
「プロンプトはど~しますか」
「第567平行宇宙の量子燃料サイクル機構の理事長は何故反対するのか?」
「了解で~す・・・結果が出ました」
検索結果を要約すると、量子燃料サイクル機構の理事長は量子爆弾の開発を目指しているが量子燃料を供与してしまうと開発に遅れが出るので断ったと云う事になる
さらに量子検索を掛けたら、帝国海軍の軍令部が量子燃料サイクル機構と敵対関係にあり、理事長の暗殺を計画していることも分かった
しかし帝国陸軍の量子陸援隊が理事長の警護に当たっているので、通常の銃器での暗殺は困難であると軍令部は判断している
そこで軍令部は、暗殺用の特殊銃器として量子散弾銃の製造に着手したが難航している模様である
「帝国海軍の軍令部に量子散弾銃の製造を援助すると申し入れて、その代わりとして軍令部から帝国政府へ量子燃料の供与を依頼して貰うのが最善だろう」
「そ~すね」
「AIフォーム515文書を軍令部に送信してくれ」
「了解で~す」
「操縦室(設計図)」
すぐさま軍令部から返信が来た
量子散弾銃の設計図と引き換えに、政府への燃料供与の要請を確約するとの事であった
設計図が平行宇宙船から軍令部へ送信された
量子散弾銃が速やかに製造され、暗殺部隊が組織された
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