デイジーチェーン

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『法務省は今日三人の死刑を執行したと発表しました』 自殺志願者だった女性がそれを見て立ち上がった。発表された名前を見てへなへなと座り込み、目の前のヤキソバを一心不乱に食べ始めた。 黒はそれを見て微笑むと、「お好み焼き追加して!」と叫んだ。 「何が起きてるの?」 月香はほぼ察したが確信を得たくて質問した。 「彼女の自殺の原因だった男が死にました」 死刑囚の一人に覚えがあった。無差別に七人を殺し現行犯逮捕された通り魔。 彼女は恋人を失った悲しみと言っていたが、恋人が被害者だったのか。 「その男の最初の運命の死因は病死のはずでした。これから八年後に獄中で。運命が変わって、死ぬのが今日になったのです」 「…彼女を救ったから、そう変わったの?」 「そこで終わっていたらそうなっていません。その後の四人も救って初めて生まれた運命なので、ご自分のせいだと思わなくていいですよ。運命とは複雑な連鎖で、あなたがひとつ何かをしたから簡単に決まるものじゃないんです」 「アキコさん、この方にカルーアミルクを作って差し上げて」 「そんなオシャレなものここじゃ無理よ」 「乾杯したいのよ。何かいいお酒はない?」 「ドンペリならあるけど」 昼のスナックで五人で乾杯した。
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