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1 虫の知らせって、そんなだっけ?
朝、うなされて目が覚めた。
怖い夢を見たのかもしれないけど、全く思い出せない。
頭の真ん中に残るような重さと、ザワザワした気持ちが気持ち悪い。
1日の出だしから、最悪。
●
どよーん、としたままで学校の駐輪場に自転車を止めた瞬間に、香奈が見えた。
「心、おっはよー! ……ひっ?!」
駆け寄ってきて後ずさるとか、何よ。
「心かと思って挨拶したらユーレイだったからビックリしたよ! ……大丈夫?」
「おはよ。……変な夢見たらしいのと、もやもやして何か落ち着かない」
心配はうれしいけど、幽霊は取り消してよ。ご本人様だってば。
心だよ。
「そっかあ。大丈夫?」
「わかんない。大人しくしてるよ」
「そういうのってさ、虫の知らせじゃない?」
んむ?
虫の知らせって、何か良くない事が起きるのを感じてるんだっけ。
嫌だなあ。私今きっと、唇がアヒルになっている気がする。
「だったらさ、虫よけ買ってこようか? すっごい効くやつ知ってるよ?」
……は?
香奈の言う、虫の知らせって?
虫、押し寄せてくんの?
いやいや。
いやいや。
私、そんなんされたらめちゃめちゃ叫んで逃げるよ。それはそれで、立派な不幸だ。
でも。
一応聞いてみる。
「香奈の虫の知らせって……虫がいっぱい来るって事?」
「えーやだー、無理ー」
「?!!」
貴様っ!!!
自分で言ったんだろが!
「わっはぁ?! 何で、くすぐ……いやあーはっは、は、あう?! ダメー! わき腹、だ、ひゃー!!」
ありがとう、我が親友よ。
おもしろかったから、どうぞ遠慮せず。
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