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中学の敷地から少し歩いたところにある駐車場には、迎えの車がひっきりなしに往来している。私たちの中学では、保護者に車で迎えに来てもらう場合はこの駐車場で乗り降りする決まりだ。
雨の日の登下校時は自転車で来られない生徒たちの送迎でごった返す。
出入りする車の邪魔にならないよう通り過ぎようとした時、駐輪場から急ブレーキの音が聞こえた。そちらを見ると、二、三人の男子が雨の中で屯している。と、一人が自転車で車の前に飛び出してドリフトした。
何あれ?! 危なすぎでしょ!
飛び出されたドライバーが急ブレーキを踏んで、すごくびっくりした顔をしているのを見て、男子たちはゲラゲラ笑っている。
「迷惑にも程があるでしょ! 貴兄、ちょっと待ってて」
「こ、……琴理?!」
憤慨した私は、持っていたスマホから学校に通報しようと電話をかける。迷惑な悪ふざけ、許せない!
「駐車場で三年らしき男子が危ないことしてます。今すぐ注意しにきてください!」
ほんの数分で、私の通う中学校一怖い後藤先生が教頭と連れ立って駆けつけてくれた。
「ゴルァ!! そこ、何してる!!」
竹刀を振り下ろして威嚇する後藤先生。
「ヤベッ後藤だ! 誰だよ呼んだやつ?!」
「逃げるぞ!」
「逃すかッ!」
今時竹刀を振り回す先生も時代錯誤ではあるけど、こんな奴らには必要かな、と思ってしまう。
かくて男子たちはしっかり捕まって、学校に連行されていった。
当然の報いよ!
そう思って睨みつけていたら、先生に引っ張られている男子の一人がこちらを振り返りながら睨みつけているのが目に留まった。私は負けじと思いっきり睨み返す。
彼らが先生たちに連行されていくのを見届けて、私は貴兄と歩き出したのだった。
「よかった、馬鹿な奴らが捕まって」
「そうだね、でも琴理、気をつけないと……」
貴兄がまた何かお小言っぽいことを言ってたけど、また心配症と過保護が発動してるな、くらいに思って聞き流した。
ー-けれど私は、そのとき本当に何にも考えていなかったことを、後で思い知ることになる。
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