2.報復

1/2
前へ
/16ページ
次へ

2.報復

 翌朝登校した私は、教室の自分の机にたどり着いてハッとした。  机の上にチョークで文字が書かれていた。 「チクリ魔は消えろ」  ピンと来たのは、昨日の自転車の危険運転を通報した時、こちらを見ていた男子がいたことだ。目をつけられていたらしい。  面倒なことになったかな……。貴兄の心配する顔が脳裏をよぎった。  でも私、間違ったことはしていない。 あれはあの子達の悪ふざけの度がすぎていたんだもん!  そう思って、堂々と過ごすことにした。  昼休み、トイレに行こうと教室を出たところで両側から男子に挟まれた。案の定、昨日ふざけてた男子達だ。 「花堂琴理、ちょっと顔貸せよ」  一緒にいた凛ちゃんが慌てて私の腕を掴んだ。 「琴理?!行かなくていいよ!なんなのあんた達?」 「関係ない奴は引っ込んでろ」  男子達が凛ちゃんに向かって凄む。 「大丈夫だよ、凛ちゃん!」  ここは凛ちゃんに危害が及んだらいけない。私は凛ちゃんに目配せして、おとなしく男子に従った。  凛ちゃんの横を通り過ぎる時、小声で耳打ちする。 「できれば先生を呼んできてくれたら嬉しいな」  凛ちゃんはうなずいて走り去った。  よし、とりあえず凛ちゃんの安全確保。  私はそのまま両側を男子に挟まれて裏庭に連れて行かれた。 「ちょっと、いい加減離してくれない?私になんか用なの?」  バクバク言いそうになる心臓を落ち着かせながら、私は強気を崩さないように相手を睨み据えた。 「お前さ、この前俺たちのこと先公にチクっただろ?!」 「チクられるようなことしてたからでしょ?どう考えても迷惑だし、危ないことしてるんだもん」 「なんだと? 俺らを怒らせると上が黙ってねーからな?! 高校にアニキがいるんだぞ」  そう言って、一人が私のセーラー服の胸倉を掴む。 「そう言うの、虎の威を借る狐って言うんだよ。誰と兄弟だろうとあんた達はただの中学生でしょ!」  声が震えそうになるのを懸命にこらえて、私は啖呵を切った。 「生意気な女だな」  一人が威嚇するように一歩前に踏み出した。体格がいいから迫力がある。  でも怖がるもんか!  私は足を踏ん張って堪えた。  その時、 「姐さん!!先生呼んできたよっ!」  濱口大雅が体育館の陰から飛び出してきた。それを見て、不覚にもホッとしてしまった。  胸倉を掴んでいた男子が、舌打ちして私を突き放した。 「このままで済むと思うなよ」  捨て台詞を吐いて走り去る男子達の後ろ姿を見て、私はへたっと座り込んでしまった。 「大丈夫ですか?姐さん。無茶しないてくださいよ、ホントに……」 「だ、だいじょぶだいじょぶ。ちょっと緊張が緩んだだけ……」  ヘラヘラ笑って見せる私に大雅は呆れた顔をしながらも、背中をさすってくれる。  大雅は、前に町内でちょっとしたいたずら事件を起こしたのだけど、それを貴兄(たかにい)に丸く収めてもらってから「カフェ・一善」に出入りするようになった中二男子だ。 「あれ?そう言えばなんで大雅はここに?」 「凛先輩が呼びに来ました。職員室より近いからって」  大雅がそういうのと同時に、凛ちゃんが先生を伴って走ってくるのが見えた。 「ことりーっ!」  ありがとう、凛ちゃん!
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加