2人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「何だって? それは僕が……!」
貴兄が顔色を変えて身を乗り出した。
帰宅後、カフェ一善で貴兄に今日あったことを話している。
「大丈夫だから、貴兄! 口を出さないで。自分で何とかするから」
私は大事にしたくなくて、慌てて貴兄を宥める。
「でも、もしものことがあってからじゃ遅いんだよ? 琴理。すぐに校長室に乗り込んで相手の親まで引っ張り出してやる!」
「やめて、貴兄! 先生や親に怒られたりしたら余計に怒りがこっちに向くだけだよ。そしたらまた面倒なことになるよ。だからここは私に任せて」
私が言い出したら聞かないのを知っている貴兄は、まだ何か言いたそうだったけど不承不承折れた。
「……もし手に負えないことが起こった時は、必ず僕に相談すること。約束してくれるか?琴理」
念を押すように言う貴兄の顔には、心配でしょうがないと書いてある。
「ごめんね、心配かけて」
私は、貴兄に素直に謝った。
「本当だ……」
貴兄は、そう言うと私の頭に手を置いた。
「でも、心配し過ぎだよ。大丈夫大丈夫!」
私は明るく言って、頭に乗せられた貴兄の手に触れた。
ちょうどその時ドアベルが鳴って、入ってきたのは大雅だ。
「あ、まずいところに来ちゃった?」
「何もまずくないから!」
と言いながらも、私は慌てて貴兄から少し距離を取る。
「兄妹水入らずの邪魔をしないでくれるかな」
貴兄が迷惑そうに大雅を睨む。大雅は慌てたように話し出した。
「さっきの奴らの情報、仕入れてきたんですよ、アニキ! ヤツらはうちの学年でも、まわりが遠巻きにして恐れているヤンキーです。なんか、リーダー格の野元ってやつは高校に兄貴がいるらしくて、そいつがまた筋金入りのワルだとか」
ふーん、そうなのかぁ。兄弟揃ってヤンキーなんだね。
「ちょうどいい、大雅君。頼まれてもらいましょうか」
何か思いついたらしい貴兄がにっこり笑う。
貴兄に頭が上がらない大雅は、最近では事実上子分のように扱われている。
「マズイところに来ちゃった、かな……」
大雅が呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!