2人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「琴理、危ないっ……!!」
貴兄が身体ごと覆い被さって来た。
すぐ横を猛スピードのバイクが走り去って行く。
私は貴兄に頭を抱えられながら、壁に身体を打ちつけた。
あと少し遅かったら、確実に跳ねられていた。
心臓がまだバクバク言っている。
「琴理、怪我はないか……!?」
貴兄が至近距離で私の顔を覗き込んでいた。
頷くと、貴兄はほっとしたように腕の力を緩めた。
それまできつく抱きしめられていたことに気づく。
頭上でギリっと歯ぎしりする音がした。
見上げると、貴兄が低い声で呟いた。
「これは……許せないな」
その切れ長の瞳をギラッと光らせる。
「僕を本気で怒らせたらどうなるか、分からせてやる」
ーー貴兄が怒ってる。
今まで見たことがないくらいに。
その姿はゾクゾクするほどカッコよくて、私はこんな時に何を考えてるんだろうとぼんやり思ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!