プロローグ

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プロローグ

「琴理、危ないっ……!!」  貴兄(たかにい)が身体ごと覆い被さって来た。  すぐ横を猛スピードのバイクが走り去って行く。   私は貴兄に頭を抱えられながら、壁に身体を打ちつけた。  あと少し遅かったら、確実に跳ねられていた。  心臓がまだバクバク言っている。 「琴理(ことり)、怪我はないか……!?」  貴兄が至近距離で私の顔を覗き込んでいた。       頷くと、貴兄はほっとしたように腕の力を緩めた。  それまできつく抱きしめられていたことに気づく。  頭上でギリっと歯ぎしりする音がした。  見上げると、貴兄が低い声で呟いた。 「これは……許せないな」  その切れ長の瞳をギラッと光らせる。 「僕を本気で怒らせたらどうなるか、分からせてやる」  ーー貴兄が怒ってる。  今まで見たことがないくらいに。  その姿はゾクゾクするほどカッコよくて、私はこんな時に何を考えてるんだろうとぼんやり思ったのだった。
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