運命に抗った結果は?

1/1
前へ
/14ページ
次へ

運命に抗った結果は?

 私は到着の二時間以上前から羽田空港の到着ロビーで俊輔を待っていた。  不安を感じながらも一方で予知夢の運命に絶対勝てると信じていた。だって私達は運命のふたり、これからもずっと一緒に過ごしていくんだから……。  到着ロビーには到着便の表示画面が在り、到着便が早い順に並んでいる。俊輔の便はまだ下の方だった。新たな便が到着する度にアナウンスがあり、また荷物の受け渡しが完了すると、その便は表示画面から消えていく。そして俊輔が乗った便の表示が少しずつ上がって行った。到着予定時刻は定刻という表示だった。  一九時三二分だった。到着予定時刻の三分前に俊輔の便のステータス表示が突然『遅延』になった。一瞬、心に不安がよぎったが「大丈夫!」と気を取り戻した。  でも三〇分経っても、俊輔の便だけは『遅延』のまま表示画面に取り残されていた。何人かの出迎えの方が騒ぎ始めた。私の心も動揺し始めた。  その時、ブルンとスマホが震えた。取り出して見るとニュース速報が表示されている。 『伊丹発の極東航空ボーイング七八七、東京湾へ墜落。乗員乗客三八五名絶望か』  衝撃を受けて固まった。次から次へと涙が溢れてくる。堪らなくなって大声で泣いた。到着ロビーを歩く人達が泣き叫ぶ私を見ていたがそんな事はどうでも良かった。  予知夢の運命に勝てると信じていたのに……。俊輔が到着ロビーに出てきたら高らかに勝利宣言するつもりだったのに。 「私達は運命のふたり。だから予知夢の運命に打ち勝った」って……。  でも逆に予知夢に抗えず運命通りの結果を辿ってしまった。  私は大声で泣き続けた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加