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「わぁー!」
大声を上げながらベッドから跳び起きた。そこには見慣れた自分の部屋の景色が広がっている。
「……夢だった。良かった」
ベッドの上で大きく息をして呼吸を整える。
「何て夢を見るんだろう……」
そう呟きながらスマホの時計を見て驚いた。
「寝坊だ!」
急いで身支度を整えると、朝食も取らないまま玄関に向かった。
「行って来ます!」
「綾、いってらっしゃい。気を付けるのよ」
母の声を背中に玄関から駆け出した。その時、突然、隣の家から飛び出して来た人にぶつかった。
「あっ!」
バランスを崩して転びそうになった瞬間、大きな手が私を支えてくれた。
「……綾。走ると危ないぞ」
その声に振り返るとそれは隣に住む俊輔だった。
「えっ、俊輔だって飛び出してきたんでしょ。気を付けてよね」
頬を膨らませながら彼を睨む。
でも私はこのやり取りに不安になっていた。これって、さっき見た夢と……同じじゃない? まさか……。
俊輔と二人で大きな国道に出てそこを右折する。
「綾! 待って!」
その声に振り返ると国道の反対側を加奈が走っている。
これは……やっぱり夢と同じ……。そう思って私がその場に立ち止まった瞬間、もう加奈は国道を渡り始めていた。私は加奈に叫んだ
「加奈! 道路を渡っちゃダメ!」
でももう間に合わなかった。加奈の後方から猛スピードで走って来た大型トラックが彼女を跳ね飛ばした。
「えっ?」
跳ね飛ばされ地面に投げ出された彼女をトラックのタイヤが轢いていった。道路には血まみれの肉片となった加奈が転がっている。
私の横で俊輔も立ち竦んでいる。彼の腕を掴んで見上げた。
「……嘘、これも夢よね……」
震えながらそう呟いたけど彼は呆然と私を見返すだけだった。私の耳に救急車のサイレンの音が響いてくる。
えっ? なんで、この夢はいつまで経っても終わらないの……?
結局、加奈が交通事故で亡くなったのは現実だった。
つまり私が今朝見た夢は加奈が亡くなる予知夢だったのだ。
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