ダマシアイ ~いかさま店 vs チート客~

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「ちょっと紫音さん、あなたバカじゃないの! こんな露骨な挑発にのるなんて…」 「大丈夫や。ちょっと遊ぶだけや。雪麗(シュェリー)、おまえも少し付き合えよ」  雪麗(シュェリー)は、不正がバレていないうちに、さっさとこの場から立ち去りたかった。でも、紫音というこの男、一度言ったらテコでも動かない頑固なところがある。仕方ない、こんな場所でこの男と揉めて目立っては元も子もない。そう思った雪麗(シュェリー)は、しぶしぶ紫音のわがままに付き合うことにした。 「じゃあ、ちょっとだけよ。でも、このチップの半分は私が頂くわよ」 「オッケー、けど、一晩付き合う約束は忘れるなよ」と、にっと目を細めたと思いきや、紫音は真顔に戻り念での話に切り替えた。 『雪麗(シュェリー)、この女ディーラーの思考と腕がわかったら、そん時は予定通りプレイしても勝ち目はあるんとちゃうか?』 『まあ、そうだけど…』 『まだ妨害電波を使えるんやろ?』 『それは、無理よ。奴等もバカじゃないわ。リモコン無線が使えないとわかった以上、今度は有線に切り替えてくるわ』 『ん!? そこまで調べてるんやったら、次こっちはどんな手を使うつもりやったんや?』 『タイミングをみて停電を起こす予定だったのよ』 『ふっ、用意周到やったって訳か』 『私たちに抜かりはないわ』  意味ありげに、にんまりとしながら雪麗(シュェリー)を見つめた紫音。お次は、妙齢なディーラー鈴玉(リンユー)の胸元に目をやり、声を発した。 「それじゃ、鈴玉(リンユー)、始めてくれ」  可愛く(うなず)いた妙齢なディーラーは、ルーレットの前に立ちプレイヤー達に営業スマイルを見せて挨拶をしだす。 「オッケー、皆さん! さっきチェンジしたディーラーの鈴玉(リンユー)です。よろしくお願いします。──皆さまに大きな幸運があることを!」  鈴玉(リンユー)がそう言うと、小さなボールを人差し指の先で回しだした。 「おぉー!!」「いいぞっ!」「へぇ~若いのにやるじゃねーか」「どうやって、回してるのかしら?」  またもやプレイヤー達の思い思いの声が聞こえてくる。紫音も感心した眼差しを向け、しばしパフォーマンスを楽しんだ。  鈴玉(リンユー)が指先でボールを回転させつつウィールも回しだす。数秒後、手首のスナップを利かせボールをルーレット盤に投げ入れた。 「プレイス ユア ベット《さあ、レイアウト上にチップを置いてください》」
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