秘められた才性

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「葉山さんが明日の試合に期待できるんは、よーわかったで。せやけど、なんで10億円もの金を賭けなあかんねんや?」  次に問いを投げ掛けたのは山崎だった。先ほど鈴木に紹介された堺屋商事の会長だ。 「それは今はゆえませんわ。ただ一つ言えることは、今のままでは孟 勝峰(モウ ションフォン)の持ち駒に賭けが集中して、それこそ賭けが成立せえへんのんとちゃいますやろか?」 「なるほどな、たいして儲かれへんねんやったら賭ける奴も少のーなるからな」 「でも、俺に金が集まったらどうなります?」 「そらぁ、試合も賭けも盛り上がりますがな。なるほど、それが狙いかいな。せやけど、葉山さんが試合に勝ったら、ワテらがミベット地区で工場をださんでもええのはわかる、せやどな、どうやったらウイグラルから工場を撤退させれまんねんや? 何か秘策でも、おありでっか?」 「今は、俺を信じてくれとしか言えません。それと、鈴木さんから聞いてもらってると思いますが元金の10億円は要りません。でも、賭けで儲けた金はそのまま俺に渡して欲しいんですわ」 「う~ん、もうちょっと納得できる説明が欲しいんやが…。まあしゃーないな。明日、死ぬリスクもあんのんに、ワテらのために挑戦してくれるんや、ここは葉山さんを信じて、いっちょ賭けたろか」  腑に落ちないことが多い山崎だったが、紫音になにかを見いだしたのだろう。あっさりと決断する。 「では、明日の試合でこちらの葉山紫音さんに10億円を賭けられる方、挙手を願いします」  夜も更けてきた。急き立てるように鈴木が皆に最終的な決断をうながした。 「あっ、その前に、もうひとつええかな?」 「はい、紫音さんどうぞ」 「えっと、この中には奴らに弱味を握られてる方もおられると思います。その辺も考慮してますんで…、まあ今はこれぐらいしか言えませんが、俺に賭けてくれたらなんとかしますわ」  紫音が、すべてを説明できないのは理由があった。それは、この経営者達の中にこの国の実権を握る公参党(こうさんとう)の幹部と繋がっている者がいてたからだ。
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