戯れの神芝居

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◇ ◇ ◇ ◇  白いレンガ造りの建物の前で、紫音と雪麗(シュェリー)はボディーチェックをされてから中へと入っていく。  建物の中は、ホテルの豪華なカジノとはまったく異なっていた。正装した旅行客も見当たらない。かわりに、地元の客達だろうか、ラフな格好をした者達ばかりが、バラエティーに富んだゲームに(いそ)しんでいる。それにバーカウンターでは、酒浸りの薄汚い老人が誰もいない遠くを見つめ、くだを巻いている。おまけに、目を開けていられないほど煙草や葉巻の煙がもくもくと立ちこめている。  扉から入ってすぐのスロットマシーンが立ち並ぶ方へ目を向けると、スロットレバーをリズミカルに引いてる淑女達が欲どおしそうな(まなこ)をピリピリと血走らせている。その隣のビリヤードスペースでは、瓶ビールとキュウを交互に持ち変え、わいわいと賭けを楽しんでいる若者達。その他にも、ポーカーやバカラ、ブラックジャックをする扇型のテーブルでは、無表情で相手との心の読みあいを味わっている中高年達も。  そして、奥にあるルーレットスペースでは、大きなテーブルの周りにいる老若男女達が息を呑んで転がされた玉の行方を目で追っている。その後、数字が描かれたポケットへ玉が入る度に、歓喜の声と残念な声が(はじ)けあっていた。その少し離れた壁際では4、5人の娼婦達が、今夜つきのある客に目星をつけ、愛想と色気を振りまこうとスタンバイしている。  そう、まさにここは場末の酒場のようなギャンブル場。  そんなフロアーの真ん中の通路をゆっくりと進む2人。先に雪麗(シュェリー)が姿勢を正し艶っぽく歩き、そのすぐ後に紫音が続いた。  背が高く人間離れした美丈夫な紫音に、妖艶な美しさをを漂わす雪麗(シュェリー)。  ひときわ異彩を放つ2人は、他の客達の目を大いに引いた。そんな客達の視線をもろともせず、建物の一番奥へと突き進む。  そこには、銀行の金庫のような大きくて分厚い鉄扉があった。その鉄扉の正面には丸くて大きなレバーもついている。外部からの破壊攻撃や火災からも守ってくれるそうな強度のある鉄扉。その鉄扉の前で、立ち止まった雪麗(シュェリー)が後ろを振り返り紫音に釘を刺す。 「もうここからは、後戻りはできなくてよ」 「あぁ」 「じゃあ、行くわよ」  警備の者が、二人を見るなり重そうな極厚の鉄扉を開けてくれた。 「ウェルカム プリーズ カミン」
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