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彼の名は、ダグラス・キタムラ・カルロス、ブラジルに籍をおく日系人だ。当時、多額の負債を抱えていた四菱自動車に手腕を買われヘッドハンティングされた60代の男性。彼は入社後、わずか2年で同会社を黒字に転換させ、社長就任後フランスの大手自動車会社と提携させ世界的な自動車会社へと成長させた凄腕経営者だ。
その彼が公参党の幹部と内々の関係にあることなど、誰もが楊として知らなかった。
(しまった! Q-チューバーのあいつらと戦う前やったら、ただの若造の戯言で終わっとったのに、今、奴は俺を危険分子やと思いだしとる。こりゃ、下手したら俺はスパイ容疑で拘束されるかもしれへんな…)
そう思った紫音はもう少し言葉を添えてみることにした。
「えっと、さきほどの説明をちょっと付け加えておきたいんですが…、──俺が勝って賭けの儲けが手元に入ってきたら、このマカオで風俗を始めようかと思ってるんですわ。なので、俺が風俗店を開店したら、皆さん、うちの上客になってくださいね」
「そうですか、さっきカジノで言ってたのは本気だったんですね。そのために金を集めようとしてたんですか…」
鈴木が少し残念そうな口調で話す。もっと立派な大義が紫音にはあるのだと思っていたが、どこか拍子抜けした感じになっている。
「まあ、ワシらはウイグラルから撤退させてくれたらなんでもええわ」
山崎がいう。
「はい、なので今夜はその前祝いということで、皆さんには目一杯楽しんでいってもらおうとおもって」
紫音がそう言うと、破廉恥な結界をこのフロアーいっぱいに張った。それは、結界内にいる誰もが性欲に脳を蝕まれるものだった。
だが、はたしてこんなことで敵と内通しているダグラス・キタムラを誤魔化すことができるのだろうか。そんな不安を残しつつ、淫靡な妖力を含んだ破廉恥結界で彼の身も心も狂わせてやろうと考えたのだ。
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