秘められた才性

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 さっきからずっと、合体したまま顔と顔が触れそうな距離で喋る紫音と鈴玉(リンユー)。付き合いたての恋人同士のようだ。 「それで、鈴玉(リンユー)のおばあちゃんがその寺の出身なんやな」 「すご~い、全部わかるんですね。そうです、そうなんです、私の祖母が妙林寺の出で…、それで、父親が私をそこに預けたんです」 「ふむ、それでな、鈴玉(リンユー)の血筋を遡っていったら、孫悟空とも血縁に当たるんやけど、そのことを誰かから聞いたことはあるか?」 「…はい、あります。かなり古い時代に、竹簡に書かれた鬼籍というものがありまして、そこに代々のご先祖様が記載されてるんです。その頂点に斉天大聖(せいてんたいせい)様の名が…」 「で、鬼との関係は?」 「……! やっぱ紫音さんには隠し事はできないですね。私達はその子孫なんです。時代とともに、いくつかの部族に分かれたらしいんですけど、詳しくはあまり聞かされてないんです」 「そっか、それでルーレットのボールを上手に使いこなせてたんやな。あの玉の扱いは、人間技やないからな」 「ほんとうに紫音さんって凄いですね。そこまでわかるとは…でも、さっきのカジノで大老様が、見鬼の才が三兄弟(彼ら)にはあると言ってでしょ。私にはその見鬼の才はないんです」 「ふっ、それの方が幸せかもよ、視たくないもんもよーさんあるからな」 「でも、雪麗(シュェリー)ねぇーさんも言ってたけど、紫音さんって一体何者なんです?」  すると、紫音は美丈夫な顔をほころばせて、鈴玉(リンユー)の手をつかみ自身の頭に持っていった。  さっきまで囁くような声で話していた鈴玉(リンユー)は、紫音の流れるような角を触った瞬間、驚きの声をあげた。 「うそっ! 紫音さんも !!」 「シッ!」  鼻に人差し指をあてた紫音。鈴玉(リンユー)は目を丸め自身の手で口をふさいだ。 「おまえとは、遠縁になるんかもしれへんな」 「なんか嬉し~い、紫音さんが私と血縁だなんて」  鈴玉(リンユー)は、紫音に覆い被さったままアソコを締めつける力加減で喜びを表した。だが、その傍らでは、独りで悦楽を味わっている雪麗(シュェリー)が、薄目を開け、ことの概略(あらまし)を感じとっていた。
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