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ダマシアイ ~いかさま店 vs チート客~
奥の部屋に入ると、もう一人の警備の者が待ち構えてた。この男もよく鍛えられた筋骨粒々のガタイ。男は自分の身体を紫音と雪麗にさりげなく見せびらかすようにして満面の笑顔で迎え入れた。おそらく気持ち悪くなるほどのナルシストなのだろう。
部屋のなかに視線を移すと、高性能の大型空気清浄機が何台も設置されているのか、そこらかしこには煙は立ち込めていない。手前には円形のテーブルが5つ据えられており、すでに満席状態だ。どれもポーカーやブラックジャックなどのカードゲームのテーブルのようだ。ついさっきの場末の酒場のようなカジノとは違い品の良さそうな客が目立つ。
奥には10m以上ありそうなバーカウンターがあり、紳士風な中年男性らが高級コールガールと楽しそうに酒を酌み交わしている。
そんなバーカウンターの奥にある5段の棚には世界各地の酒が並べられており、その右隣と左隣にはとても大きな横長の水槽が壁に埋め込まれている。LEDでライトアップされた右隣の水槽には色鮮やかな珊瑚礁や自然の神秘を思わせる水草がゆらゆらの揺れ動き、色とりどりの熱帯魚もひらひらと優雅に泳いでいる。左隣の水槽の中には点滅発光する無数の小さなクラゲがプカプカと上下していた。
そして部屋の中央には、今回、雪麗と紫音がお目当てのテーブルがとりわけ存在感を放っていた。そう、カジノの主役であるルーレットテーブルがドンと据えられている。さすがは花形的な存在。色彩華やかなテーブル台にきらびやかなルーレット本体。回転盤であるウィール(=ホイール)もよく手入れされピカピカに磨きあげられている。
迷わず雪麗は、一直線にルーレットテーブルに向かっていった。
もうすでにディーラーがウィールをまわしだし玉を投げ込んでいる。プレイヤー達はテーブルの上に描かれた数字の枠にチップを置きだす。
このカジノはアメリカンルーレットを採用している。アメリカンルーレットとは、36個の数字とゼロを2種類含む番号で構成されているため、『0』と『00』の数字が回転盤のスポット(玉が落ちる枠)とレイアウト(テーブルに描かれた数字の枠)に組み込まれている。因みに『0』が一つだけのヨーロピアンルーレットも存在する。
ディーラーがウィールを勢いよく回した。そうして、プレイヤーが賭け終わるのを見るなり、同ディーラーが、「ノーモアベット」と客達に向けて宣言した。
『No more bet(ノーモアベット)』という掛け声は、それ以上、賭けることはできないという合図。
この間もウィールは回り続けている。まだボールは落ちていない。
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