秘められた才性

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 紫音はこのとき、隣で悦楽の笑みを浮かべている雪麗(シュェリー)の思考を読んでいた。  恐るべき照美の縁結びの力。照美から、今回の任務は自分のルーツを探求することが(かなめ)になるとも言われていた。さらに、女の恨みを買いすぎると大鬼に変身してしまう呪いの鍵も見つけられるだろうと。  すべての魂はこの世に生を受ける前、必ず四つの魂が一つとなりて生まれ出てくるのだとか。そう照美から聞かされていた。紫音の場合、一つは軍神として名高い毘沙門天の化身の坂上田村丸。それと酒呑童子の血縁の鬼だ。今の段階ではそれしかわかっていない。だが、鈴玉(リンユー)と、雪麗(シュェリー)の思考が流れ込んできた今、すべてではないが新たな事実が少しづつわかりだしてきた。  先読みもできる照美。これまでも紫音はこの照美の力でどれだけ助けられたことか。そうなれば、(おの)ずとしなければならないことが浮かび上がる。もっと深く知るためには、その土地に行かなければならないと。孫悟空の遺骨と遺品が祀られている妙林寺と、雪麗(シュェリー)の故郷へ。  その地に赴けば、自分の本当のルーツがわかるはず。それと、もしかしたら敵である大蛇(オロチ)とそれに味方する鬼との因縁の関係をも。  紫音がそんなことを考えていたら、突然、雪麗(シュェリー)がムクッと上半身を起き上がらせてきた。 「鈴玉(リンユー)、しょろしょろ私にも代わって…いいわよね?」  紫音と重なったままの鈴玉(リンユー)は顔だけを横に向け、質問を質問で返す。 「えっ!? だってさっきは、絶対に無理って言ってませんでしたっけ?」 「気が変わったのよ。ねぇ、はやくぅ~」  急に甘え口調になった雪麗(シュェリー)は、恥じらいを忘れ鈴玉(リンユー)に詰め寄った。そこへ紫音が割って入る。 「意外と雪麗(シュェリー)はワガママなんやな。よっしゃ、じゃあこっちに来いよ、2人まとめて相手したるから」
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