死練《しれん》

3/16
前へ
/187ページ
次へ
 高い内壁の角に監視カメラが3台設置されている。おそらくスピーカーとマイク機能もついているはず。  オロジャッジグループの幹部達が集まっている宴席では、200インチの超大型テレビが天井から降りてきていた。  皆で食事を楽しみながら、鬼隈と竜一を見定めようとしているようだ。  地下の閑散とした部屋には明かりが灯され、スピーカーから彪鬼(ひょうき)の声が聞こえだす。 「さあ、竜一と鬼隈よ。この人の子達の心臓と肝臓と脳ミソをこっちに持ってきてくれ。ただし、恐怖を極限までに味あわせた後で、取り出してくれよ。そうすることで美味になり、長寿にも効く食材になる。特にアドレナリンを多量に放出した子供の脳は甘味があって、ことさら旨いからな」 「……」「……」  危胎(きたい)に瀕する鬼隈と竜一。明らかに顔から焦りが滲みでている。打開策を練ろうとする鬼隈が瞬時に頭を働かせる。 (こんな幼い子供達の命を簡単に終わらすやなんて、できる訳がない。じゃあ、どうする? …………あかん、この状況では、どうしょうもあらへん。せやけど、このままなんもせぇへんかったら、おそらく俺らは…)  そう思った鬼隈が、竜一に念を用いて話しかける。 『万事休すやな、竜一、なんかええ手はあるか?』 『もう、殺るしかないやろ。このままワシらが何もしぃーひんかったら、間違いなくワシらが殺られる。それに、こんな悲劇に見舞われた子供らは、まだまだよーさんおるはずや。今はこの子らに犠牲になってもらって、ワシらが奴等の信用を勝ち取るんが先決や。他にもおる、よーさんの子らを救うためにもな』  いやに合理的な考えだった。だが、いうまでもなく鬼隈は承知しない。 『おまえ、真剣に言うてるんか?』  顔をしかめた鬼隈が竜一を一瞥する。 『仕方ない。他にええ方法なんてないはずや。奴らを(あも)ぉー見たらあかん』
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加