死練《しれん》

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「バカな…、そんなはずは……年齢が合わないだろう」  紫音にそっくりの男は年の頃もよく似ていた。紫音の年齢は31才。ということは、クローンを30年以上前から生み出していたことになる。その頃は、まだクローン技術が進んでいなかったはずなのに。鬼隈が、そのことに疑問を抱いた。 「ふっ、そんなことか…まあいいだろう、それも冥土の土産に教えてやる。──元々、我ら鬼は大蛇(オロチ)様が太古の昔に産みだした存在。ゆえに、大蛇様の力を借りればクローンの成長を早めるのも、そう難しくはないのだ。これで、わかってもらえたかな?」 「……だが、奴の本当の力は真似できないはずだ」 「それはどうかな。まぁ、それなら、あそこにいる人間の子供達で試してみよう。──おいっ! 少し距離はあるが殺れるか?」  彪鬼が紫音のクローンに向かって問いかけた。 「おおせのままに」  紫音のクローンは彪鬼に軽く一礼をしてから、すぐさま子供達に(てのひら)をかざした。もう、子供達は裏口のゲート30メートル手前のところまで近づいている。  手を取り合って逃げる幼児達。転んでも起き上がり必死になってゲートに突き進んでいる。  だが次の瞬間、紫音のクローンが、「ふんっ!」と、口から気合いを(ほとばし)った。 「やめろ !!!」  鬼隈の声もむなしく、クローンの掌から強烈な衝撃波が放たれた。  手のひらが閃光し、凄まじいほどの空気圧が子供達に向かっていく。辺りの空気がピリリと振動し土埃(つちぼこり)が子供達の方へ渦を巻きながら舞い上がる。 ── ドンッ !!  ──  当たった。車が肉にぶつかったような鈍い音がする。  衝撃で生じた土煙が視界を奪う。さっきまで鮮明に見えていたゲートも見えなくなっている。その上、子供達の姿も確認できない。
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