死練《しれん》

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 一夜明け、もう西側にある壁一面の窓から燦々と明かりが射し込んでいる。  午前10時、あまりにもまったりとした時を過ごした紫音達が目を覚ましだす。  不思議なもので、昨夜の一件以来、雪麗(シュェリー)鈴玉(リンユー)麻美(マーメイ)は紫音と打ち解けていた。いや、彼女達は紫音のことが好きでたまらなくなっていた。  あれから、何度も何度もイカされた雪麗(シュェリー)は、ことが済んだ後もオーガズムの波が幾度も押し寄せ快楽に酔いしれた。同時に紫音と心も溶け合った。男女の絆を最短で深めるのがポリネシアンセックスの醍醐味。すでに雪麗(シュェリー)は、麻薬漬けにされた娼婦のように紫音なしでは生きていけない体になっていた。  それは、鈴玉(リンユー)麻美(マーメイ)も同じだった。力もあり金もあり頼りにもなる。おまけに至高の快楽も味あわせてくれる。ほとんどの女性なら惚れるのも無理はない。そして少々の女癖の悪さは大目にみるようになる。そう、ひとときの快楽を求めるあまり目をつむるのだ。  好きと嫌いは紙一重。毎度のことだが、このことが強烈な恨みをもたれる始まりになるのだが……  元カノの七海からも、そのことについてコンコンと説かれるのだけれども、それを一向に理解できない紫音。やはり、彼も一種の発達障害なのだろうか? 「ふあぁぁ~ぁ~、さあ、まだ昼前やけど、今晩の試合会場に早めに行っとこうか」  うーんと、裸のまま天井に指先がつきそうなほどの背伸びをし、大きなアクビをする紫音に3人の美女達は小さくうなずいた。 「それじゃあ、私達も用意しないとね。──でも困ったわ、ドレスがビシャビシャ、着替えなんか持ってきてないし…」  ベッドに横たわったままの雪麗(シュェリー)がそう言うと、すでにホテルの制服を着た麻美(マーメイ)が答える。 「それなら、下にあるブティックから幾つかの服を持ってこさせますから、大丈夫ですよ」 「じゃあ、私の服もいいかしら?」  隣のベッドから声がする。シーツに身をくるんだ鈴玉(リンユー)だった。彼女の制服も乾いていないようだ。 「オッケー、じゃあ麻美(マーメイ)、そうしたってくれるか。じゃぁ、その服を待っている間、もう一回しようか?」  紫音は、あたかもゲームをするようにそう訊ねると、雪麗(シュェリー)鈴玉(リンユー)に目をやった。 「……!」「……!」  ギョッと目を真ん丸にした雪麗(シュェリー)鈴玉(リンユー)。頬がほんのり赤くなり、期待と喜びが顔から溢れだしている。でもこれ以上は身体がもたないかもしれない。2人は顔を見合わせた。  麻美(マーメイ)は聞かぬフリをしてブティックに電話をしだす。  もうすぐ、鬼隈と竜一が処刑されようとしているというのに、紫音はこのことを知る由もなかった。
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