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そうこうするうちに、雪麗と鈴玉が紫音のいる部屋に駆け込んできた。
「紫音さん、たいへんよ、いま洞義さんから電話があって、もうすぐ予選の組み合わせの抽選がはじまるから、早く来てくれって」
息を切らした雪麗が、焦る気持ちを抑えて口を開いた。
「ん? ボラギって誰やったっけ?」
「んもぉー、大老様の付き人の…でしょ!」
「あっそうや、痔の薬みたいな名前の人な」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
「とにかく、早く会場に行きましょ! もう迎えの車を下で待たしてあるって言ってるわ」
それを聞き、紫音がクローゼットの前で素早くジャージに着替えだす。着替え終わると、いくつものカラフルな石とポータブル充電器をファスナー付きのポケットに詰め込んだ。
── ◇ ── いざ出陣 ── ◇ ──
麻美とブティックのスタッフが名残惜しそうに見送るなか、紫音と雪麗、鈴玉がリムジンの後部座席から手を振ってホテルを後にした。
「でも、紫音さん、大丈夫? なんかかなりお疲れみたいですけど…」
「そ、そうね、私たちが悪いのかもね」
鈴玉に続き雪麗が赤面しながら申し訳なさそうにつぶやいた。
「俺はぜんぜん大丈夫や。それより、2人共、その服もめっちゃ似合てんな」
向かい合わせに座った紫音は、感心した眼差しを彼女達に向ける。
「そうでしょ~、惚れ直しましたぁ~?」
鈴玉が照れ笑いしながら、ふざけたふうにいう。彼女は、ブティックのスタッフと麻美がチョイスした服をかなり気に入っている。
肌見せしてもきれいなチュール(レース)素材を重ね合わせたブラウス。透け感が可愛らしい。ボトムパンツも肌なじみのよいホワイト。清潔感がありナチュラルにまとまっている。
隣の雪麗は、シアー素材を合わせた軽やかな抜け感のあるジャケットにパステルグリーンのボリュームパンツ。凛とした雰囲気をキープしながら、ハッとする存在感も。できる大人の女を醸し出している。
そんな2人を満足そうに見つめた紫音は、さっそく密穴での発掘作業の成果を確認しようとする。先に雪麗の眠っている潜在能力を引き出そうと考えた。
「さてと、まずは雪麗、このペットボトルに入ってる水を凍らせれるか、やってみよか?」
いきなり紫音が、突拍子もないことを言いだした。
「へっ!? 紫音さん、何を言ってるの?」
すっとんきょうな顔を浮かばせた雪麗は、紫音の顔をまじまじとみいった。
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