鬼が出るか蛇が出るか

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 試合会場に向かうリムジンのなかで紅炎にルール説明などをしているうちに、気がつくと試合会場がある建物の前に着いていた。  ひときわ大きなエントランスの自動ドア。建物のまわりには厳重な警備がしかれている。小国の国家予算並みの利権が絡むのだから当然のこと。  紫音は再び紅炎をオーヴに戻した。  3人のボディチェックが終わると、入ってすぐのところに洞義(ボラギ)(エイ)が迎えにきていた。 「こんにちは。昨日はどうも、よく眠れましたか?」  洞義(ボラギ)が紫音に訊ねた。 「あぁ、絶好調や」  もう目の下のクマは消え、紫音の体力は回復していた。いうまでもないが、彼の回復力は生半可ではなかった。  銃で撃たれても次の日にはケロッとしてしるタフな男。いや、屈強な鬼でもあった。 「では、エントリーはもう済ませてありますので控室まで御案内します。それで、ほんとうに名前はハムサップロウで良かったのですか? 一応、お聞きしていた通りの名前でエントリーさせていただいたんですが…」  それを聞き、雪麗(シュェリー)鈴玉(リンユー)は、しまったと言うような顔を浮かべていた。というのも、昨夜、お酒が入ったのもあり、悪ふざけで付けた名前だったから。  まさか、ハムサップロウ(変態親父)という名でエントリーするとは思いもしなかったようだ。 「それでええで、その名前、ジャックスパロウみたいで、メッチャ気に入ってるんや」  洞義(ボラギ)(エイ)が不思議そうな顔で紫音をみる。名づけ親である雪麗(シュェリー)は、取り繕ったような笑顔をみせ頬を引き吊らせた。 「ん? なんかあかんのんか、この名前?」  皆の態度に違和感を覚えた紫音は一応、聞いてみることに。 「いえ、べつに問題ないですわ、アハ,ハハハ」  小さく笑った雪麗(シュェリー)に、とぼけ顔の鈴玉(リンユー)。どうせ、このあと当の本人は試合に出ないのだからと、知らんぷりを決め込んだ。
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