鬼が出るか蛇が出るか

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「いえ、そういうのんじゃ……私達は、おひー様から紫音さんの護衛を仰せつかっていますので、片時も離れないようにと」  そう音糸が言う。が、本当は紫音を監視する役目を担っていた。女関係はもちろんのこと、それ以外にも、あることを照美から頼まれていた。  未来を大まかに見通せることができる照美。紫音がルーツを探るとき、必ず行きつく場所があるとみていた。その場所とは孫悟空の魂が眠り続けている妙林寺。そこに何らかの秘密が隠されているようだ。  そういうわけで、音糸と華糸は紫音からひとときも離れたくなかった。彼女達は照美にかなりの恩義を感じている。天才科学者である仲間の浮螺糸(フライト)を人間の姿に変身できるようにしてくれたおかげで会社の代表という重責から解放された。それに加え、運命の人とも縁を結んでくれたからだ。ゆえに、彼女達は照美の言うことには忠実だった。 「護衛ってか……まぁ、照美のことや、どうせ浮気でも疑ってるんやろ?」  紫音は疑惑に満ちた眼差しを双子の姉妹に向けた。けれども、彼女達はこれ以上喋るまいと口を一文字に結ぶ。 「ふっ、まあええわ、それじゃ、お前らはオーヴに入ってついてこい」 「はい、そうさせてもらいます」  再び声が揃った双子の姉妹。そこへ、紅葉が彼女達に近づき音糸と華糸の手をとって力強くぎゅっと握り合わせた。 「音糸、華糸、お願いね。彼に間違いを起こさせないようにしっかりと見張っててね」  杏樹と椿も戦地に戦友を送り出すときのように引き締めた顔を彼女らに見せた。 「わかりました。必ずヤリチンを阻止してみせます」    双子の姉妹が口をそろえ気合いを入れて言う。 「うんうん、なんだったら悪さできないようにアソコを糸でグルグル巻きにしてもいいからね」  目に力を込めた紅葉がいう。 「なんなら、いっそのこと切っちゃいます?」 「それはダメよ! 使い物にならなくなっちゃうから」  なぜか紅葉が顔を赤くした。 「おい! おまえら何を訳のわからんことばっかりゆうとんねん。もお、音糸、華糸、さっさと入れ!」  そう語気を強めた紫音は、あきれた顔を浮かばせながら、音糸と華糸に石を当てオーヴに収めた。 「はい、続けるぞ。じゃあ、おまえらは音糸らの代わりをお願いしてもええか?」  何事もなったように話を進める紫音が鬼女の三姉妹に尋ねた。 「はい、対戦相手の人間を棄権さすようにもっていけばいいのですね」 「そや。でも、おまえらは相手に気づかれようにそんなことできるんか?」  その問いには杏樹が答えた。 「それは大丈夫です。私達は人間の臓器を外からでもつかめますから。それで、心不全とか心筋症や狭心症、心不全なんかも発症さすこともできますし。あっ、心不全って、2回も言うたかな?」  ハート型に開けた口を手で押さえ、はにかんだ顔を見せる杏樹に紫音は恐怖した。 「なんやて、臓器を外からでも掴めるってか!? それってオカルトの世界やで」  その会話を端で聞いていた洞義(ボラギ)ら三兄弟に雪麗(シュェリー)鈴玉(リンユー)も、ただただ驚き鬼女の三姉妹から距離をとった。
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