鬼が出るか蛇が出るか

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「ではさっそく、私たちはさっき言ってた暴食の女豹とかいう対戦相手を棄権さすようにしてきますので、その女がいる場所まで案内してもらえますか?」  紅葉が洞義(ボラギ)に視線を注ぐ。だが、その問いにバツが悪そうに答えたのは埜僂(ノール)だった。 「あっ、いや、もう、陳 佩芳(チン ベイファン)は、リングに上がってるんです。もっと早く言えばよかったんですが、言うタイミングを逃してしまいまして……今1時前ですから、あと10分足らずで予選の第一試合が始まりますので、さあ、紫音さんも早くリングの方へ」 「そっか」 「おいおい埜僂(ノール)、そんな大事なこともっと早く言わないと。それで、大老様はどうしたんだ?」 「すまん、あにじゃ。大老様は先にVIP席に案内したんだ」 「そうか、だがこれからは目を離してはならんぞ。紫音さんが勝ち進むにつれて大老様の命が危険にさらされるかもしれんからな。(エイ)よ、埜僂(ノール)と一緒に大老様の護衛にあたってくれ! 猛将軍(やつ)のことだ、どこにスナイパーを潜ませているかわからんからな、くれぐれも油断するなよ」 「はい、あにじゃ」「はい」   「そっか、なら、うってつけの奴がおるわ、こつらを護衛につけたらええわ」  横から紫音が口をはさむと、ポケットからまたしてもアイビーとピンクのマーブル模様の石をひとつ取り出し彼らの名前を呼んだ。 「クモノコフ、クモコビッチ、出てこい」  とたん、カラフルな石からGIジョーのような勇ましい男と図体(がたい)のよいオカマが現れた。彼らは音糸と華糸の叔父にあたり大蜘蛛の妖し。数年前にロシアで発見されたUMA(未確認動物)のスレンダーマンとも呼ばれる妖しだ。
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