鬼が出るか蛇が出るか

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 あわただしく紫音が皆に指示をだしつつ試合が行われる会場へと向かった。  まもなくして紫音が映画館のような扉を開けると同時に目をしばたたかせた。驚いたことに、そこにはだだ広い円形闘技場があった。古代ローマのコロシアムを思わせるような造り。その中央には畳50帖ほどのリングが敷かれていた。  このリングは、鳥かごのように金網で囲まれている。どちらかが死ぬまで出られないようだ。  紫音は洞義(ボラギ)に案内されるままリングの近くまで来た。すると、レフェリーなのだろう。坊主頭のマッチョの男性が金網の扉を開けリングの中に招き入れた。  すでに、暴食の女豹こと陳 佩芳(チン ベイファン)が、複数の鉄の棒をリングに繋いだ多節鞭(たせつべん)をブンブン振り回している。ウォーミングアップをしているのだろう。古武術の達人と云われるだけあって多節鞭の扱いにはすこぶる長けているようだ。  女だてらにたくましい風貌、髪は乱れ、肌は荒れており浅黒い。が、目が大きく指で摘まんだような鼻に形の良い眉、唇は荒れているが総体的に整った顔だち。レオタードのような民族衣装を纏い、胸からお腹にかけて鉄の鎧のようなものを着けている。一見するとアマゾネスのようだ。 「おまえ! 遅かったじゃないか、私に恐れをなして棄権したのかと思ったぞ」  陳 佩芳(チン ベイファン)が高圧的な物言いで挑発する。 「ふっ、俺としたことが、レディを待たすとは、悪かったな。──ん!? なんや、もっと女かと思ってたんやけど、よー見たら、なかなかええ女やないか!」 「おまえ、私を侮辱しているのか!? ──まあよいわ、その減らず口も、一撃で叩けなくしてやるわ」  そこへ、先ほど扉を開けたレフェリーが、2人に注意を呼びかけた。 「2人とも私語は慎むように。それでは始めるぞ。お互い用意はいいか?」
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