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「住手!《ストップ》」
突如、レフェリーが、暴食の女豹、陳 佩芳と紫音の間に入り試合を中断した。
「おーっと! これは、一体どうしたことでしょう? どちらかが死ぬまで勝敗が決まらない今回の試合では、レフェリーストップがないはず。ですが……趙さん、これはどう解釈すればよろしいのでしょう?」
「それはで…」
── ♪ ピン ポン パン ポン ──
趙が解説しかけたとたん、今度はリングアナウンス前の効果音がスピーカーから流れだした。
「ちょっと、趙さん、すいません。今からアナウンスが流れますんで、皆で聞きましょう」
── ただいまのハムサップロウ選手の行いについて審議をいたします。さきほど試合中にハムサップロウ選手が何かの飲み物を口を含みましたので、それが違法な薬物ではないかを、今から成分分析いたします。従いまして、試合は一時中断いたしますので、このまましばらくお待ちください ──
それを聞き、実況アナウンサーがマイクに向かって喋りだす。
「おそらく今、リングアナウンスで流れた違法な薬物とは、ドーピングのことでしょう。この試合では、銃火器以外の武器は認められていますが、興奮剤や筋肉増強剤などのドーピングは認められていません。というのも、危険な違法薬物は選手を狂わして、レフェリーや観客達を危険に巻き込むからと運営側が判断したようです。と、いうことはやはり、そういうことなのでしょうね、趙さん?」
「そうですね、やはりこの…」
── ♪ ピン ポン パン ポン ──
「ん!? なんと! 早くも結果が出たみたいですね。再び、リングアナウンスが流れる模様、皆さん、耳を澄まして聞いてみましょう」
── ただ今の調査の結果、ハムサップロウ選手が口に入れた液体は、女性の尿だと判明いたしました。従いまして、違法性は無いと判断し試合は続行といたします ──
「そういえばさっき、レフェリーがハムサップロウ選手のペットボトルの口を嗅いだときに嫌な顔をしていましたからね。おそらく、尿に含まれるアンモニアの匂いを嗅いだからなのでしょう。しかし、おどろきました。試合中に女性のオシッコを飲むとはハムサップロウ選手、名前の通り、清々しほどのハムサップロウっぷりですね。趙さん、彼のこの奇怪な行動はどう思われますか?」
「うーん、これ…」
「ちょっと待ってださい! さっきまで血の気が引いて顔色が悪かったハムサップロウ選手ですが、今はみるみるうちに血色がよくなってきているみたいです。なぜでしょう? 女性のオシッコを口に入れモチベーションがあがったのかー!? 趙さん、これをどうみますか?」
「そうですね、オシッコが栄養ドリ……」
── カンッ! ──
「さあ! 試合が再開したー!! 次はどんなことが起こるのでしょう? 目が離せなくなってまいりました! 趙さん、これから、どんな展開になっていくと思われますか?」
次の瞬間、目尻を吊り上げた趙がアナウンサーにぶちギレた。
「おまえ! 一回、どついたろか !!」、
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