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大歓声が沸き起こっている。主に男性陣からの歓喜の声だった。相変わらず、女性陣からは生理的嫌悪感を抱いた黄色い声があがっている。
「おーっと、これはすごい。まだ、予選の第一試合が始まったばかりだというのに、会場は大盛り上がりだー!! さあ、ここで先程の試合をスローでリプレイしてみましょう。──ん? なにやらハムサップロウ選手が唾液をたっぷりとつけた指で、陳 佩芳選手のはだけた胸あたりを、いや、乳首を集中的に突いていますね。あぁ、なるほど、これは、あの日本のアニメなどで知られる北斗神拳! いや、よく見ると、北斗神拳とは少し違うような気がしますね。なぜかと申しますと、ハムサップロウ選手は、秘孔ではなく女性の性感帯であるツボばかりを狙い打ちしていたようです。暴食の女豹と謳われた、あの陳 佩芳選手が、女らしくも艶っぽい表情を浮かべています。それに、何やらアソコから大量の愛液が! と、いうことは、そう、そうです、これは、まさしく真のハムサップロウだーー!! もうハムサップロウの名を欲しいままにしている! もうここまでくると、ハムサップロウとしては、彼の右に出るものはいないと言っても過言ではありません!!」
実況アナウンサーの気合いの入った声が会場に響き渡ると、またしても彼の名を呼ぶ大喝采が沸き起こった。
── ハム サップロウ! ハム サップロウ! ハム サップロウ! ハム サップロウ! ハム サップロウ!…………… ──
(やっぱり、ジャックスパロウみたいな名前にして正解やったな)
つくづくそう思った紫音は、高々と重ね合わせた両手を上げながら白い歯を見せて観客達の声援に答えた。ところがそんなとき、レフェリーが矢継ぎ早に指示をだしてきた。
「斗争!《ファイト》 早くとどめを!」
(そうやった、相手を殺さな終われへんかったんや…)
ルールを思い出した紫音はリング上に転がっていた多節鞭の先だけを持ち上げた。そうして、おみくじを引くようにして毒針を出すと、その針を陳 佩芳に刺そうとする。
「これで、この毒針で……おまえに殺された奴らの弔いにもなるやろう」
「そうだな、さっさっと殺れ」
その刹那、彼女の姉であるシェフが悲痛な声を張り上げた。
「やめて! お願い! 妹を殺さないで!」
このとき、必死で訴えている姉の姿を見た陳 佩芳は、大いに悔やんだ。
(姉さん……そういえば、私は姉さんに何もしてあげてなかったな。親を早くに無くして、私を必死で育ててくれた姉さんに、私は……。倹約家の姉さんが、爪に火をともすような生活をしてるのも知ってたのに…、それなのに、私は…)
「フッフフ、どうやら、思い残すことが存分にありそうなや」
彼女の思考を読み取った紫音が、うっすらと微笑んだ。
「つへこべ言わずに、早く殺れ!」
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